英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

矢内失冠

2010-04-20 20:28:56 | 将棋
 あぁぁ、負けてしまいました。A級陥落してしまっているので、女王から一気にB級棋士へ転落。一方の甲斐新女王は、二段から一気に女王のトップへ。こうなると、NHK杯微妙です。二人の立場は逆転。
 司会・聞き手が甲斐女王になり、
「では、対局場の(読み上げの)矢内さん、よろしくお願いします」
と呼びかけるシーンを想像してしまいます。


 0-2という星勘定も苦しいのですが、将棋の内容から考えても、逆転防衛は相当困難のように思えました。
 現在の矢内女王不調さを差し引いての実力と甲斐女流二段の充実ぶりを加えた実力を比較すると、矢内女王の方が、まだ上だと思いますが、二人の棋風を考えると、矢内女王にとって相性が悪いように感じます。

 はっきり言って、矢内女王は序盤は下手。序盤はたいてい作戦負けになる。わざと悪くしているんじゃないかと思えるほどだ。
 ただ、はっきり悪くならず、決め手を与えない。ボクシングで例えれば、パンチを受けるのだが、急所をはずしたり、パンチに合わせて体を引いて、ダメージを小さくする。そして、ただ防御するだけでなく、時折、ゆるいパンチをカウンター気味に当てたり、鋭いアッパーで相手の機先を制する。
 そうしながら、相手のパンチの射程距離をを見極め、間合いを計って詰めていく。対する相手は、パンチも当たっていて押しているはずなのに、手ごたえをあまり感じない。徐々にスタミナが切れ、平衡感覚もおかしくなっていく。
 ちょっと話がそれますが、聞き手をする矢内女王が好きだ。棋力は高いので、解説にも付いていけるうえ、初心者への気遣いも心得ていて、解説を補足する気の利いた質問や、フォローも忘れない。
 また、さりげない会話も素敵である。基本的に相手の話をよく聞き、答える。時には、とぼけたり、ユーモアで返したりする。矢内女王の受け答えがうまく、懐が深いので、解説者も安心して、解説したり、踏み込んで突っ込むこともできる。やりやすそうだ。
 「うふふ」と独特な笑みで、追及をかわすが、そこがたまらない。なかなか、パンチが届かないような、方角を間違えるような感じだ。そう「幻惑」させるのだ。
 矢内女王の棋風もそんな感じで、幻惑させ、疲労させる。「矢内幻惑流」である。対局相手はすっかり平衡感覚を失いバランスを崩して、抵抗することができない。

 対する甲斐女流二段は、勝ちやすい手、負けにくい手を選ぶ。一番の長所は方向感覚が狂わないことだ。
 疑問手、悪手を指しても、すぐ正しい方向に向き直る。粘りの手を指しても、後ろを向くのではなく、前を向きながら半歩、あるいは一歩下がって、足場を整え、前進するエネルギーを蓄える。地道に勝利に歩を進み続けるのをやめない。既に先駆者がいるが、敢えて「甲斐地道流」と呼ばせていただく。
 矢内女王が幻惑させても、正確でタフなコンパス(方位磁石)を持っていて、方向を失わない。「甲斐磁石流」と呼ぶべきか?(「地道流」「磁石流」…女流らしくないなあ)
 足を滑らせても、着実に進んでいく。矢内は一歩一歩のコンパス(歩幅)は大きいが、方向がずれるので、足を踏み外しやすく、バランスを崩しがち。
 最近の矢内女王は、序盤の失点が大き過ぎて追い切れなかったり、スタミナを使い果たしてしまったりすることが多い。また、終盤のパンチの威力がなかったり、コンビネーションが悪かったりして、勝利をつかめないことも多い。
 将棋の感覚がずれているせいもあるが、精神的な疲労、あるいは、自信の喪失によるところが大きいのではないか。秒読みの中、読み切れずに踏み込めず、長引かす手を選んで、形勢を損じてしまう。
 棋力が落ちているとは思えない。勝利へ執念と自分を信じる気持ちが薄いだけ。復活を待ちます。
コメント (4)
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