英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

羽生×広瀬戦 雑感

2011-08-31 21:04:52 | 将棋
 王位戦第6局は、羽生二冠が勝ち、タイトルの行方は最終局に持ち込まれました。
 今期の七番勝負を振り返ると……
 第一局は中盤過ぎから羽生二冠が変調。
 第二局は広瀬王位が快勝かと思われた局面から羽生二冠が猛烈に追い上げ逆転模様となったが、追い上げに精力を使った羽生二冠が息切れしてしまった感がある。
 第三局は序盤から中盤にかけて羽生二冠の巧みな指し回しで快勝。
 第四局は横歩取りの「後手良し」の変化に羽生二冠が誘導し、広瀬王位がその通説(定跡)を打破できずに敗れる。
 第五局は広瀬王位の振り飛車穴熊に羽生二冠が居飛車穴熊で対抗したが、終盤の入口で間合いを見切った広瀬王位が羽生二冠の穴熊を一刀両断した。
 第六局は相振り飛車から羽生二冠が力戦型に持ち込む。やや無理な動きを広瀬が巧みに捉え優勢に。しかし、羽生二冠も馬を作られても焦らず、抑え込まれた角を捌き、決定打を与えず徐々に混戦ムードになり、逆転したと思われた局面から強引に決めに出たが決め切れず、再逆転。しかし、遠巻きに攻める角の巧打を逃し、羽生二冠が勝利。
 逆転逆転の凡戦に思えるが、両者が秘術を尽くしたねじり合いの熱戦だった。

 新人王の記念対局を含めた全対局を振り返ると、広瀬王位の終盤の玉の距離感が非常に正確だ。玉の距離感とは、詰み不詰の読み切り、詰めろが掛かるか否かの読み切りを含めた互いの玉の危険度の感知能力を指す。
 特に穴熊戦での玉の距離感が正確なので、終盤の入口での切り込みが実に鋭く、羽生二冠もバッサリ切られ、為すすべもなく敗れている印象が強い。羽生二冠の穴熊戦における強さは相当なモノのはずだが、それ以上に広瀬王位は強いということか。
 また、序盤の差し手争いにおいても、広瀬王位は五分以上の戦いぶり。羽生二冠がはっきり優位に立っているのは、穴熊戦以外の特に力戦型の中盤から終盤でのねじり合いにおいてのみ。

 羽生ファンとしては、広瀬振り飛車穴熊を撃破して欲しいところだが、現状では撃破は困難のように思える。かつて羽生二冠は、藤井竜王の藤井システムを攻略できず、七番勝負途中で急戦にシフトチェンジして勝利している。この時のようにシステム(広瀬振り穴)攻略は後の機会に譲って、他の戦型で戦うことも十分考えられる。
 もちろん、広瀬王位にも選択権があり、どんな戦型になるかは予想は困難だ。

 さて、先ほど、「後の機会に攻略を譲る」という表現をしたが、藤井システムの場合、羽生二冠が攻略したのではなく、「藤井システム対居飛車(穴熊)党」という図式が成立していた。居飛車党にとって、藤井システムは目の上のタンコブだった。藤井システムは居飛車穴熊を攻略するというよりは、居飛車穴熊に組まれる前に攻めかかるというもので、居飛車穴熊等にとっては、組んだ後に攻められるのならともかく、組む前に攻められ、居飛車穴熊の思想の「固めて乱暴する」の逆の不本意な戦いを強いられる。
 このように藤井システムは居飛車穴熊の存在を否定するようなものだったので、居飛車穴熊等はシステムつぶしに躍起になった。その甲斐?があって、藤井システムは居飛車穴熊に分が悪くなっていった。
 対して、広瀬振り飛車穴熊の場合はどうであろうか?今のところ、広瀬振り穴を習得している棋士はいないと言っていいだろう。なので、居飛車穴熊等にとっては広瀬王位と対局しなければ、攻略を練る必要はない。
 それに、相振り飛車にするなど、広瀬振り穴を避ける手段もある。さらに、広瀬王位自身も、居飛車も多用し、さらに振っても穴熊に囲わないことも多く、振り穴は「伝家の宝刀」状態であり、対戦相手も対振り穴対策のみを考えればよいわけではない。
 そういった理由で、対広瀬振り穴攻略の確立のスピードは緩やかであると考えられる。ただ、広瀬王位がタイトル戦などの大舞台に立つ機会が増えると、注目度が高くなり研究速度が増してくるであろう。
コメント (6)
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