英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『攻防!打ち歩詰』 中田章道七段作 解答

2011-08-22 18:41:13 | 詰将棋
8月15日記事『攻防!打ち歩詰』 中田章道七段作の解答です。

 今回は、大筋は一本道なのですが、手順のアヤがやや複雑なので、私の思考過程をそのまま再現してみます。

 まず、打ち歩詰の初形。打ち歩詰の回避方法はいくつかあります。
①攻め駒を弱くして、歩を打っても詰まないようにする
②守備駒を呼び込んで歩を打てるようにする(呼び込んだ守備駒で歩を取れるようにする)
③守備駒を動かして、玉の逃げ道を作る
 などが考えられます。
 ①②③に共通すること……と言うよりは、攻め駒を捨てれば、①~③のどれかの効果が表れます。
 というわけで、取りあえず駒を捨ててみましょう。この時に気をつけることは、上部の押さえになっている駒は捨てないようにすることです。(本作の場合は2六の銀)
 で、捨てる駒は龍か桂となります。強力な龍を捨ててしまうこともけっこうあるのですが、取りあえず桂を捨ててみたくなります。▲1三桂成△同香(第1図)となった時、1六の角が龍の引き場所の3四に通ってきます。

 実戦の場合は「しまった!」となるところですが、詰将棋、特に打ち歩詰回避のばあいは「よし」です。ちなみに、初手▲1三桂成に△同玉には▲2二龍寄△1四玉▲1一龍△1三合駒▲1五香まで。

 さて、△1三同香には、ここぞとばかり▲3四龍(第2図)と角の利きに引きます。

 これを△3四同角(変化図)なら

 ▲1五歩と打ちます。この時、龍を捨てた効果で玉が2四に逃げられるので打ち歩詰にならず(打ち歩詰回避テクニック①)、△2四玉に▲3六桂で詰みます。
 ただ、ここで残念なのは、△3四同角に▲3四同龍としても詰んでしまう点です。(▲3四同龍△2四合駒に▲2五角で詰み)

 とにかく△3四同角としては早詰みなので、△2四歩(第3図)と踏ん張ります。実戦なら、2四には合駒を打つことをまず考えますが、詰将棋の場合は何となく軽く歩を突いた方が良いことが多い気がします。

 この局面の場合は、詰み筋が見えてきますよね。この詰み筋なら2三の地点は何もない方が良いのです。
 とにかく第3図を見てみると、玉方の踏ん張りで依然打ち歩詰です。そこで打ち歩詰回避テクニック②を駆使します。それが▲2三龍引!これには△2三同桂の一手ですが、これにより▲1五歩(第4図)が可能になります。(この場合の1五歩は直接玉を追い詰めると言うより、同桂と取らせ逃げ道封鎖する意味合いが強い)

 龍捨てによって桂が2三に呼び込まれたので、△1五同桂(第5図)と取ることができ打ち歩詰にはなりません。

 あと少しですね。残る持ち駒は桂馬。第5図でこの桂を2六から打てれば詰みます。今まで上部の押さえの駒で頑張っていた銀ですが、皮肉なことに、ここに至っては邪魔駒と化しています。そこで、泣く泣く?▲2五銀と捨てます。△2五同角の一手に▲2六桂で詰み上がります。
 ちなみに、第3図の△2四歩のところで合駒を打つと、▲2三龍引の時、歩が手に入るので、詰上がりの時、歩が余ってしまいます。玉方は最善で逃げるという決まりなので、駒が余らないでギリギリ詰むように逃げるのが正解です。

 めでたし、めでたし。

 ただ、ここで気になるのは、初手▲1三桂成。
 △3四同角(変化図)が早詰めになるのなら、初手の意味は?
 とにかく、初手を入れずに進めてみましょう。
 ▲3四龍△2四歩▲2三龍引△同桂▲1五歩△同桂(変化図2)と進みます。

 ここで▲1三桂成△同香なら正解手順(第5図)に戻りますが、△1三同玉で詰みません。
 初手で何となく捨てた桂捨て(▲1三桂成)は、△1三同香とさせて玉を狭くする効果があったわけです(このタイミングでないとダメ)
 詰将棋的思考で初手の計の成り捨てを考えたのですが、実戦の間隔で初手▲3四龍の手順を読み変化2図に至り、≪ならば初手に桂を成り捨てれば解決!≫と気がつき、感動するのが正しい手順かもしれません。
コメント (2)
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