将棋の勝利条件は「玉を詰めること」です。と言っても、玉を詰めるのは最終目標で、もう少し幅を広げて言うと、「玉を攻めることが勝つための手段」となります。
しかし、戦型によっては例外もありますが、最初から玉を目指すのも難しい場合が多いです。なので、第一段階として、「敵陣を破る(敵陣に成り込む)」ということが目標になります。敵陣に成り込めば、それを足がかりとして玉に迫ることができます。特に、飛車が成り込めば、玉を射程距離に捉えたと言って良いです。
とは言え、相手もそれは許さじと防衛してくるので、敵陣を破ることは容易ではありません。では、敵陣を破るにはどうしたらよいでしょうか?
一番基本的な攻め(戦術)は「数の攻め」です。物量(攻撃力)にモノを言わせて突破するという単純明快な戦術です。ですが、初期の戦力は同等なので、なかなか実現できません。本格的に攻める前に、うまく駒得できれば、数の攻めが容易にできるようになるのですが、駒得することもなかなか簡単ではありません。
が、ここは細かいことを抜きにして、駒得をして戦力的に優位に立っていると仮定して、数の攻めの実例を考えてみましょう。

図で先手の手番だと、当然飛車を成り込みますよね。局面が終盤で、先手が飛車を成ることよりもっと価値のある手があれば(例えば相手の角が取れる)、手を抜くことも考えられますが、序盤なのでそういうことはまずないので、先手の飛車成りを防がねばなりません。
というわけで、△3二金(第2図)と2三の地点をカバーします。

この図で、2三の地点の互いの勢力は、先手1(2八の飛車)に対し、後手も1(3二の金)です。飛車は強い駒ですが、それは、駒の移動範囲が大きい(駒の利きが多い)ということで、攻撃力や耐久力は皆同じです。先に顔を差し出せば、殴られるだけです(後出しジャンケンのようなもの)。この場合、▲2三飛成とすると、おいしく△2三同金と飛車を取られてしまいます。
「足し算の攻め」
その地点の勢力(駒の利き数)が同じなら、先に手を出した方が負けます。これが将棋の法則で、視点を変えれば「駒の利きが多ければ、先に手を出しても勝ち」とも言えます。2対1なら先に手を出しても勝ちです。そこで、2三の地点の勢力を増やします。▲2六香(第3図)。

後手が放置すれば、▲2三香成△同金▲同飛成となり、大成功です。
そこで、後手もそれは許さじと△4一角(第4図)と2三の地点を増強します。

これで、2三の地点の勢力は2対2となり、先手はこの地点を破ることはできません。そこで、▲2七香(足し算図)と勢力を増やします。

これで、2三の地点の勢力は3対2と先手が優勢になりました。しかも、後手はこれ以上増強する手段がないので、先手の2筋突破は確定しました。これが、将棋の基本「数の攻め」です。
これで、「めでたし、めでたし」と締めくくればいいのですが、実は、この数の攻め(足し算の攻め)にはデメリットがあるのです。
それは……「攻めが重い」のです。「重い」というのは、効率が悪いという意味です。
今一度、足し算図をご覧ください。
先手の攻撃陣、飛車と香2枚を重ねたロケット砲は強力です。でも、一番働かせたい飛車の頭に香が2枚も乗っかっていて、飛車が成り込むのに手間がかかりそうです。なので、後手は放置して他の地点でポイントを稼ぐのが将棋の考え方ですが、先手の攻撃陣の重さを際立たせるため△4二金(肩透し図)としてみましょう。

先手の攻撃陣が肩すかしを喰らっている感じがしませんか?
「なんだ、『基本は数の攻め』と言っておきながら、「重い」だの「肩透し」だのいうのか?」
と、叱られそうですね。でも、「数の攻め」は基本で、頭に染み込ませるべき戦術であり、そのデメリットも頭に入れておくべき性質です。
本来なら、重い攻めとそうでない攻めの境界線を述べるべきなのですが、今回は簡単に。一言で言うなら、「相手玉に近いか遠いか」です。今日は、肩透し図の先手の攻めが「重い」と何となく感じられればOKです。
さて、「数の攻め」で「足し算の攻め」を紹介しましたが、「足し算」があるからには「引き算」があるのでは、と思いませんか?
第4図に戻って、「引き算の攻め」をお考えください。

【ヒント】 引き算の攻めというのは、2三への後手の利き数を減らす手立てです。
しかし、戦型によっては例外もありますが、最初から玉を目指すのも難しい場合が多いです。なので、第一段階として、「敵陣を破る(敵陣に成り込む)」ということが目標になります。敵陣に成り込めば、それを足がかりとして玉に迫ることができます。特に、飛車が成り込めば、玉を射程距離に捉えたと言って良いです。
とは言え、相手もそれは許さじと防衛してくるので、敵陣を破ることは容易ではありません。では、敵陣を破るにはどうしたらよいでしょうか?
一番基本的な攻め(戦術)は「数の攻め」です。物量(攻撃力)にモノを言わせて突破するという単純明快な戦術です。ですが、初期の戦力は同等なので、なかなか実現できません。本格的に攻める前に、うまく駒得できれば、数の攻めが容易にできるようになるのですが、駒得することもなかなか簡単ではありません。
が、ここは細かいことを抜きにして、駒得をして戦力的に優位に立っていると仮定して、数の攻めの実例を考えてみましょう。

図で先手の手番だと、当然飛車を成り込みますよね。局面が終盤で、先手が飛車を成ることよりもっと価値のある手があれば(例えば相手の角が取れる)、手を抜くことも考えられますが、序盤なのでそういうことはまずないので、先手の飛車成りを防がねばなりません。
というわけで、△3二金(第2図)と2三の地点をカバーします。

この図で、2三の地点の互いの勢力は、先手1(2八の飛車)に対し、後手も1(3二の金)です。飛車は強い駒ですが、それは、駒の移動範囲が大きい(駒の利きが多い)ということで、攻撃力や耐久力は皆同じです。先に顔を差し出せば、殴られるだけです(後出しジャンケンのようなもの)。この場合、▲2三飛成とすると、おいしく△2三同金と飛車を取られてしまいます。
「足し算の攻め」
その地点の勢力(駒の利き数)が同じなら、先に手を出した方が負けます。これが将棋の法則で、視点を変えれば「駒の利きが多ければ、先に手を出しても勝ち」とも言えます。2対1なら先に手を出しても勝ちです。そこで、2三の地点の勢力を増やします。▲2六香(第3図)。

後手が放置すれば、▲2三香成△同金▲同飛成となり、大成功です。
そこで、後手もそれは許さじと△4一角(第4図)と2三の地点を増強します。

これで、2三の地点の勢力は2対2となり、先手はこの地点を破ることはできません。そこで、▲2七香(足し算図)と勢力を増やします。

これで、2三の地点の勢力は3対2と先手が優勢になりました。しかも、後手はこれ以上増強する手段がないので、先手の2筋突破は確定しました。これが、将棋の基本「数の攻め」です。
これで、「めでたし、めでたし」と締めくくればいいのですが、実は、この数の攻め(足し算の攻め)にはデメリットがあるのです。
それは……「攻めが重い」のです。「重い」というのは、効率が悪いという意味です。
今一度、足し算図をご覧ください。
先手の攻撃陣、飛車と香2枚を重ねたロケット砲は強力です。でも、一番働かせたい飛車の頭に香が2枚も乗っかっていて、飛車が成り込むのに手間がかかりそうです。なので、後手は放置して他の地点でポイントを稼ぐのが将棋の考え方ですが、先手の攻撃陣の重さを際立たせるため△4二金(肩透し図)としてみましょう。

先手の攻撃陣が肩すかしを喰らっている感じがしませんか?
「なんだ、『基本は数の攻め』と言っておきながら、「重い」だの「肩透し」だのいうのか?」
と、叱られそうですね。でも、「数の攻め」は基本で、頭に染み込ませるべき戦術であり、そのデメリットも頭に入れておくべき性質です。
本来なら、重い攻めとそうでない攻めの境界線を述べるべきなのですが、今回は簡単に。一言で言うなら、「相手玉に近いか遠いか」です。今日は、肩透し図の先手の攻めが「重い」と何となく感じられればOKです。
さて、「数の攻め」で「足し算の攻め」を紹介しましたが、「足し算」があるからには「引き算」があるのでは、と思いませんか?
第4図に戻って、「引き算の攻め」をお考えください。

【ヒント】 引き算の攻めというのは、2三への後手の利き数を減らす手立てです。