英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

20連覇ならず、王座失冠

2011-09-28 23:16:30 | 将棋
 昨晩、全国300万人(←根拠なし)の羽生ファンが、よろめき、うなだれたことでしょう。
 いつか途切れると思っていた連覇なので、それ自体は残念ですが、それほど大きなショックはありません。
 渡辺竜王に敗れた、しかも3連敗で敗れたという事実が、大きくのしかかってきます。………もしかして、羽生王位・棋聖より渡辺竜王・王座の方が強い?……

 …………ま、と、とにかく、認めたくない事実ではありますが、「依然、羽生>渡辺」という根拠が見つかることを期待して、分析してみます。

①対戦成績
 一番実力を測るのに、分かりやすい指標です。
 14勝18敗と渡辺竜王・王座がリード。しかも、例の3連勝後4連敗を喫した第21期竜王戦(2008年)の第4局以降は5勝14敗(それ以前は9勝4敗)と相当やられている。特に、その第4局から1勝9敗と叩かれており、この時期に苦手意識が生じたとしても不思議ではない。
 この時期(1勝9敗)以後、4勝5敗と持ち直していて、拮抗状態に移行する希望的観測もできる。ただ、②タイトル戦で述べるが、脅威の連覇記録を樹立した王座戦で3連敗で敗れたのは、イメージはかなり悪い。

②タイトル戦
 第51期王座戦(2003年) 3勝2敗(防衛)
 第21期竜王戦(2008年) 3勝4敗(奪取ならず)
 第23期竜王戦(2010年) 2勝4敗(奪取ならず)
 第59期王座戦(2011年) 0勝3敗(失冠)

 タイトル戦としては1勝3敗で個々の対局で見ると、8勝13敗。しかも、内容も悪くなってきている。相当やばい状況だ。

③現状の地位
 2011年度当初、棋界最高位の竜王は渡辺竜王に譲っているものの、格式高い名人を含む王座、棋王を保持していたので、第一人者の地位は保っていた。それが森内九段に名人位を奪われ、席次を譲ることになったが、二冠対一冠、さらに、ここまでの戦歴や他棋士との対戦成績や勝率を考えると、第一人者と認識されていた。
 広瀬王位を破り、タイトル保持数を3とし、「やはり羽生は強い」と再認識させたのもつかの間、直接対決の王座戦で敗れ、タイトル保持数は共に2であるが、最高位の竜王を保持する渡辺竜王・王座がはっきり優位に立った。
 「竜王戦や羽生王位・棋聖にだけ強いのではないか」という疑惑もあったが、9月27日現在、16勝3敗、.842(全棋士中2位)と文句なしの成績。対する羽生王位・棋聖は23勝14敗、.642、勝数、対局数は1位だが、勝率は羽生王位・棋聖にしては物足りない。もちろん、勝率が低いのはタイトル戦の番勝負での10敗(9勝)が響いているだけで、私が重視する勝ち数は素晴らしい!
 さて、上記のように渡辺竜王の今年度上半期の成績は申し分なく、「竜王戦だけ、羽生二冠にだけ強い」という疑惑は一掃したかのように思える。しかし、まだここ半年の期間しか過ぎない。10月から始まる竜王戦に注目したい。
 現在の渡辺竜王・王座の勝ちっぷりを見ると、4勝0敗で防衛となるはずである。丸山九段もA級の安定勢力で実力者で手ごわい相手だが、羽生王座をストレートで破った竜王が、苦戦してもらっては羽生ファンとしては困るのである(はい、了見が狭いです)。

④今期の王座戦
 3局通して、難関な将棋を渡辺竜王が競り勝った印象が強い。勝ち方としても申し分がなかった。
 今回の王座戦に限らず、最近の二人の対局は、羽生王位・棋聖が新手や新構想を駆使し、積極的に動き、渡辺竜王それを受けとめるというパターンが多い。
 じっと上部に厚みを作ったり、攻め駒にプレッシャーを掛けて、羽生三冠(二冠)の緩みを許さない。今期の将棋では、第2局で飛車に紐を付けじっと耐える△6一歩、第3局の▲8二と~▲7二とと羽生陣にプレッシャーを掛けた手がそうである。
 逆に、羽生二冠は主導権を握っているようで、どこか急かされていて余裕がないように感じた。3局とも、観ていて勝つ気がしなかった。(『王座戦第2局の感想』とそのコメントでも感じた)
 そういう圧力の中、攻め急いで形勢を損じてしまう……これは、羽生二冠が他の棋士相手に追い込んでいくパターンではないのだろうか?こういう状況に陥ってしまうのは、やはり3連勝後4連敗から1勝9敗と負けが込んだ時期に苦手意識のようなモノが生じてしまったからなのかもしれない。
 もちろん、並の相手なら攻め急ぎ気味の羽生二冠の攻めを通してしまうが、渡辺竜王の受けは正確で、ギリギリのところを見切っていた。強い!

⑤弁明
 羽生王位・棋聖の棋力が衰えたとは思えない。強くなっていると思うことさえある。
 では、なぜ、ストレートで敗れたのか?それは、④で挙げたどこか余裕のない指し方、攻めきれるかどうかの細い攻め(攻めが途切れたら負け)という将棋の造りにしてしまったことが要因ではないのか。
 もともと、羽生二冠が最も強みを発揮するのは、終盤の一手違いのギリギリの寄せ合いであろう。とは言え、そういう将棋になりながらも、2008年の竜王戦第4局、第7局で敗れているので、そういう将棋に持ち込んでも敗れる可能性はある。
 しかし、対渡辺竜王戦に限って言うと、どこか、バランスやスタンスを崩してしまっている気がする。
 さて、その原因は苦手意識にあると思われるが、それだけではないと考えたい。
 ズバリ、疲れである。
 名人戦の後半辺りから、名人戦、王位戦(リーグ、リーグ戦プレーオフ、挑戦者決定戦)、棋聖戦、王位戦と大きな対局が相次ぎ、この他にも竜王戦(トーナメント)、A級順位戦も間に挟んでいる。5月8局、6月8局、7月7局、8月7局と過密スケジュール。タイトル戦は2日制だと移動日・前夜祭を含めると4日間費やすので、局数以上に大変。さらに、JT日本シリーズも地方対局、非公式戦の達人戦や講演やイベントにも駆り出される。
 将棋に余裕がなかったのは、この疲労によるものかもしれない…と考えたい。

 今後はやや落ち着いた日程になるようなので、順位戦、棋王戦トーナメント、王将リーグを勝ち進み、タイトル奪取を果たして欲しい。正直言えば、順位戦を勝ち続け、来季、森内名人に雪辱をして欲しい。
 2003年から2004年にかけて、森内名人に竜王、王将、名人とタイトルを次々と奪われて、王座一冠のみになったことがあったではないか!

 王位を奪取できていて、本当によかった………
コメント (9)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする