英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『ブルドクター』 最終話 「死因究明絶対不可能禁じられた暴走!」 【追記あり】

2011-09-15 19:11:26 | ドラマ・映画
 「面白く見せる」ことと「面白いものを作る」ことは、似ているようで全然違うと、叫びたくなりました。

 番組サイトの見どころとして
 愛、絆、憎しみ、裏切り、絶望etc・・・、人間が抱える深い業。
そんな、もの言わぬ死者が残した声無き想いを手掛かりに、謎と驚きに満ちたミステリアスな事件を紐解いていく。
 「死因究明」を通して描かれるヒューマニズムと、仕事と家庭の狭間で、葛藤する女性たちのリアルな生き様をお楽しみください。


 面白そうです。
 さらに、主役の江角マキコ、石原さとみの他、稲垣吾郎、志田未来、ブラザートム、市川亀治郎、市毛良枝、小日向文世と多彩で豪華な顔ぶれ。


 テーマ、キャスト共に、これでもかというくらい盛り込んで、面白そうを前面に押し出しています。
 しかし、面白そうに見せただけで、肝心の中身が練られていなかった。ただ盛り込んだだけで、テンポもバランスも悪く、中途半端で、その場限り感が強かった。
 サイトが謳った「もの言わぬ死者が残した声無き想い」とか「死因究明を通して描かれるヒューマニズム」は置き去りで、もうひとつのテーマである「仕事と家庭の狭間で、葛藤する女性たちのリアルな生き様」も、ただ挿入しただけで、緊迫感をぶち壊しにしただけであった。
 ミステリー度を上げるため、序盤からちらつかせ、最終回に向けて引っ張った武田教授死体検案書偽造も意外性やドラマ性もそれほどではなく、余分な要素と思えた。


 最終回は多くの視聴者が予想したであろうストーリー展開。
 珠実(江角マキコ)と知佳(石原さとみ)の暴走、名倉(稲垣吾郎)の正義の?裏切り、知佳とと名倉の元サヤ……お約束の展開は、最終回なので仕方がないかもしれないし、異議を唱えるつもりはない。
 ただ、そこまでに至る経緯が、その場限りの展開が多く、一貫性がないので、お約束の展開がより浮いたものになってしまった。

①無理やり家族愛の挿入
 窮地に追い込まれているにもかかわらず、母子でプールのシーン。「あきらめないこと」の教えが暴走の決断の後押しになる意味はあったものの、あのタイミングはないだろう。せめて先週ぐらいに入れておくぐらいの緻密さが欲しい。
 母(市毛良枝)のビンタも、家族を思う気持ちからだが、唐突感が強かった。
 市川亀治郎の歌舞伎シーンも巷ではかなりのブーイングだが、これほど不評なのは、ストーリーに一貫性がないことによる盛り込み過ぎからきているような気がする。

②名倉のどんでん返しも取って付けた感
 今までの流れからすると、名倉は悪の手先に収まりそうというか、そういう演出をしていた。名倉の良い面は、序盤で見せただけで、終盤は悪人一直線だった。ただ、視聴者側からすると、名倉の良い面を見せていた方が、却って、名倉がどちらに転ぶか予想がつかないように思える。
 それにしても、珠実と知佳が縄文寺(鹿賀丈史)に迫り追求したものの、証拠がなく窮地に陥った時、名倉がさっと知佳側に翻った時は、どちらにでもすぐ寝返る『クレヨンしんちゃん』に登場するブリブリ左衛門を思い出してしまった。まあ、名倉の場合、ちゃんと計画的だったみたいだけれど。
 名倉は黒だと分かっているものを白だとは言えないという信念カッコよく言い放ってたが、「じゃあ灰色だったらどう言うんだ?」と突っ込みたくなるあやふやな信念のように思えるが、どうなんだろう?

③暴走しないと始まらないのだけれど
 結果的に、勇み足気味になってしまった遺体強奪。
 名倉と神岡刑事、教えてやれよ!と言いたくなってしまう。あれだけ悩み、犯罪者になる覚悟までしたんだから。

④小道具にされてしまった名倉
 珠実の夫・高広(市川亀治郎)も武田教授の娘・美亜(志田未来)もストーリーを展開する上で小道具化されていたが、名倉でさえもその感が強い。
 法医学上の見地の違いから、珠実と対決するシーンを期待したが、中盤からは知佳の恋の悩みの種のみの存在となり、最終回では正義の味方。
 メインになった知佳との恋愛関係も、最後に元の鞘に戻っても、知佳が名倉のどこに惚れたのかが全く描かれてないので、絵空事にしか思えない。最終回で名倉に幼少の頃のトラウマを告白されてもピンとこない。
 せめて名倉をしっかり描けていれば、ドラマとして面白かったように思う。

 結局、面白く見せることに終始し、何を描きたかったのか分からないドラマだった。

以下追記です。
⑤「こんな時何ですが、書道でも」
 って、本当に「こんな時」だよ!
 これから、取り調べ、裁判、刑務所が待っている者に対して。

 無理やり、市毛さんを挿入させた見舞いのシーン。娘(珠実)の法医学への思いを充分理解している様子……なのに、平手打ち

⑥縄文寺の秘書の奥山(羽場裕一)の家族への説得
 奥山の妻の言い分(犯罪人の遺族が生活するには縄文寺を頼るしかない)は理解できるが、犯罪人にしたのは縄文寺であり、追い詰めたのも縄文寺、さらに縄文寺が殺人の指示を出した疑惑が強いのだから、説得に足る材料はあると思う。
 まして、珠実は自分の父親が医療ミスだったのではないかという思いから、法医学を目指したのだから、その心情、信念からすると、説得に力を注ぐべきだったのではないか。

⑦八代くん、キミねえ?!
「そのくらいの危ない橋、渡りますよ。武田教授の思いを晴らすためなら」
 君は加害者だろう?君が言う台詞じゃないだろう?
 よほどの鉄の心臓か、記憶喪失なのか?
コメント (9)
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