英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

王将戦第1局 佐藤九段×久保王将・棋王①

2012-02-21 21:53:41 | 将棋
 この対局が行われてから、既に1ヶ月以上経っています。言い訳すると、山崎七段の来福、大雪、スポーツ中継観戦、ドラマレビューと盛りだくさんの一ヶ月でした。間が空いてしまいましたが、やはりこの将棋は採り上げておきたいです。
 このひと月の間に、幸か不幸かネット中継のほかに、『週刊将棋』『将棋世界』さらに、菅井流の実戦など、情報量が増えました。ただ、残念なことに、私の解析力が追いつかず、まとまりそうもありません。という訳で、いつものように、細切れの記事になりそうです。気長におつき合いください。


 後手の久保二冠のゴキゲン中飛車に先手が超速4六銀を選択。そして、第1図の△4四歩が菅井流と呼ばれる最新の対抗策を繰り出してきた。超速は4六に銀を繰り出し後手の5五の歩を攻めようという積極戦法だが、菅井流は▲4六銀には△4五歩と突いて強引に4五に銀を呼び込んで、5五の利きをそらすと同時にその銀自体を攻めようという指し方。とは言え、1歩損で銀を呼び込み、3、4筋もほぼノーガード状態なので、後手としても不退転の覚悟が要る。
 まず、この菅井流について久保二冠は『将棋世界』2月号で
「△4四歩は面白い新工夫と言える。詳しい評価は今後の研究次第だが、新しい手はどんどん出ている。王将戦に続いて棋王戦の挑戦者も間もなく決まる。私もそろそろ何か用意しなくてはいけないと思っている」
と述べている。
 ちなみに、菅井流1号局は▲長岡五段×菅井五段戦で△4四歩以下▲3五歩△同歩▲4六銀△4五歩▲3五銀△5六歩(参考1図)と進み、菅井五段の勝ち。


 また、佐藤九段も『将棋世界』3月号の自戦記で菅井流に関して述べている。
「超速は後手の5筋位取りを直接咎めにいくのが骨子。先手の右銀が4六で安定すると後手は簡単に手を出しづらくなる。そこで、先手の右銀に早めに働きかけ、4六からどいてもらおうというのが△44歩型の基本的な狙いだ。
 最初△4四歩を見た時は驚いた。自分から角道を止めるので5五の歩が取られやすくなる。金銀が前に出ていかない形なので、パッと見でうまくいくとは思えなかった」
 と述べている。さらに、「4四銀型か菅井流(△4四歩型)のどちらかと予想し、ある程度の対策を練ってきた」とも。

 佐藤九段は△4四歩に▲4六銀と上がった。この▲4六銀には68分考慮している。▲4六銀と上がれば、100%△4五歩なので、その後の変化を考えたとのこと。ちなみに、1号局の▲3五歩の展開も有力そうだが、即決戦となってしまい、もう少し落ち着いて指したかったので▲4六銀を選択したとのこと。(落ち着いて指すと言っても、あとの指し手が凄かった)
 ▲4六銀△4五歩▲同銀と進み、ここで①△3二金と②△3二銀の2手段がある。本譜の久保二冠は①△3二金を選択。この手に佐藤九段は▲3四銀と踏み込んだが、▲7八玉も考えたとのこと。実際、この対局の3日後、A級順位戦の羽生二冠×久保二冠戦で羽生二冠は▲7八玉と指している。この将棋は、▲7八玉以下△4三金▲3八飛△3二銀▲3五歩△同歩▲同飛(参考2図)と進み

以下、△7二玉▲5八金右△8二玉▲3八飛△7二銀▲6八銀と進んでいる。この将棋、羽生二冠が恐ろしく丁寧に指し、久保二冠の捌きを完封して、中押し勝ちという内容だった。

 さらに、羽生二冠は朝日杯の準決勝で菅井五段と対局し、菅井流と対決している。
 この時は、△4四歩に対し羽生二冠が▲7八銀と新手をぶつける(菅井五段はこの手はまったく考えていなかった)。以下、△3二銀▲7七銀△5六歩▲同歩△同飛▲6六銀△5一飛▲3五歩△同歩▲3四歩△4二角(参考3図)と進み

以下、▲4六銀△3六歩▲3八飛△7二玉▲3六飛△4三銀▲7八玉△3二金▲5五銀左と進み、羽生二冠が勝利している。

 さて、佐藤九段は自戦記で、この▲7八玉も有力で迷ったが、歩を取る▲3四銀が成立するなら、▲7八玉より得するはずと思い、△5六歩の捌きがあり怖いが、踏み込んだとのこと。後手が暴れてくるのは目に見えているので我慢の展開と腹をくくったとのこと。

 そして、その通りの展開になったのが、第2図の▲5七玉。

 先の▲3四銀以下、△5六歩▲同歩△8八角成▲同銀△7二銀と進み、ここで▲5七玉と玉自ら5六の歩を死守しようとしたのだ。直前の△7二玉は、あらかじめ▲4四角の玉香両取りを避けた手である。

【以下続く】
コメント (5)
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