英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

王将戦第1局 佐藤九段×久保王将・棋王⑤「細心」

2012-02-27 19:20:56 | 将棋

 久保二冠の思惑通り進んだと思われる局面だが、先手の佐藤九段も7七に銀を上がって壁銀を解消し、玉も6八に引いて先手玉も安定してきた。5六を突破されたが、こだわらずに一歩引いたため、後手の大駒がつんのめり気味である。
 前回記したように5六の地点を死守する▲2六飛も成立したようだが、5六にこだわらず悪形を解消し遊び駒を働かせた▲7七銀は目立たぬ好手であった。とは言え、3歩得が1歩得まで後退し、さらに図では銀の行き場がないので、▲2三銀と突入するしかなくなった。
 もちろん、それは佐藤九段も織り込み済みで、△2三同金に▲2四歩△1四金(第4図)と、金を僻地に追いやり、と金を作れば釣り合いが取れると見ている。


 そして、本局で一番感心したのが図より▲5七歩△5二飛▲3八金(第5図)と自陣を整備した点。銀損を補うため、早くと金を作りたいが、▲2三歩成△1五金の手の交換をすると、△2六飛▲同飛△同金と飛車交換をされる上、遊ばせた金を働かされてしまう筋が生じてしまう。


 金を3八に上がったのも細心の一着。▲5八金と玉に寄せて上がりたいが、それだと、△5四角▲同角△同飛とされ、ここで▲2三歩成とすると△6四角▲3七角△同角成▲同桂△6四角(変化6図)で桂取りが受けにくい(佐藤九段自戦記)。
 さらに、▲5八金には△5四角だけでなく、△5五飛と浮き、▲6六銀なら△3五飛▲3六歩(△3九飛成を受ける)△2五飛▲同飛△同金▲6五銀△3九飛(変化7図)と暴れられる手がある(中継サイト)。


 これらの変化を抑えるため、▲3八金と上がったのである。本譜も、△5四角▲同角△同飛と進んだが、▲3八金の効果で堂々と▲2三歩成(第6図)を着手でき、と金作りが実現した。

 「この▲2三歩成では▲4三角も映るが、△5五飛▲2一角成△4二銀で大変、以下▲2三歩成は△3五飛▲3七歩△2五飛(変化8図)とぶつけられて自信がない。よって第6図では▲2三歩成が正解である。この時怖いのは△5五飛と浮いてくる手だが、この場合はかまわず▲2四とと引き、△3五飛▲3六歩△同飛▲3七歩△2七歩▲同金(変化9図)で問題ない」(佐藤九段自戦記)


 つまり、この局面では後手飛車が2筋に回って捌いてくるのを押さえるのが最優先事項で、と金を作って2四に引く準備を急ぐ必要がある。
 先の局面ではと金作りを急がず、今度はと金作りを優先させる。なんと細心な手順なのだろうか。

 ▲2三歩成(第6図)以下、△6四角▲3七角△同角成▲同桂△3六銀(第7図)と久保二冠は必死の手作りだが、歩切れで3六に銀を打つのでは苦しい。ここで、佐藤九段に豊川七段なら「味良し九段の手」と言うであろう手が着手された。その手は?
コメント (5)
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