英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

まだ、ブレイクチャンスは2度ある! ~2016年 名人戦第3局~

2016-05-13 22:57:25 | 将棋
最近よくある(特に王将戦)「暴発して、立て直すことなく寄り切られる」パターンで完敗………


 29手目、昼食休憩を挟んで1時間17分の長考で▲2四歩。
 昼食休憩の1時間を含めると2時間17分になる。1日目なので持ち時間は充分にあるので、箸を動かしながら局面を考えているはずはない。とにかく、2時間以上の間を置いての着手なので腰の座らない着手ではないはずだ。
 しかし、▲2四歩以下△3四銀▲3六飛(第2図)の動きは何となく不自然。後手の3四の銀に狙いをつけたわけだが、飛車が2筋から動いた為、△2七歩や△2八歩が生じている。さらに、4五銀とされた時には飛車当たりになる。
 ▲2四歩では、▲3六歩が有力。▲6八玉型なので2、3筋を主戦場になるような戦い方をしたい(気がする)。

 他には▲5六飛が有力。▲2二歩△同金▲3三角成△同桂▲3一角が直接の狙い。昨年度のA級順位戦の▲行方八段-△深浦九段戦、▲行方八段-△佐藤天八段戦で指されている。

 ▲行方八段-△深浦九段戦は、▲5六飛以下△6二金▲3六歩△7三桂▲3七桂△6四歩▲3五歩と進み、熱戦が続いた。
 ▲行方八段-△佐藤天八段戦は、、▲5六飛以下△6二金に行方八段が▲3六飛と手を変えたが、当人は「▲3六飛と戻すのは思いつきでしたが、腰が入っていなかったです」と語っている。思いつきとは▲3六飛△7五歩(放置すると▲3三角成△同桂▲6六角の筋がある)に、▲3三飛成△同桂▲5五角打だと思われるが、実戦は▲3六飛△7五歩に▲1七桂△7三桂▲7五歩△5四飛▲3三角成△同桂▲2四歩△3四銀▲5八金△2七歩で参考図3。

 以下▲7四歩△6五桂▲7六角△6四歩▲7七桂△4五銀▲6五桂△同歩▲2三歩成△3六銀▲4二と△4五桂▲6四桂△同飛▲4六歩(参考図4)と進んだ。



 本局に戻る。

 第2図以下△7五歩▲同歩に、午後4時53分、佐藤天八段は2時間9分の大長考で△5四飛。
 この△5四飛に対する予定手順の中に何か誤算があったのだろう。この手を見て、羽生名人が長考に沈み、そのまま手を封じた。

 やはり第2局の逆転負けが、羽生名人の心理に影響を与えている。
 ≪消耗戦を避けて、早く決戦に持ち込みたい≫
 その気持ちが▲2四歩の決戦策を考え、
 ≪佐藤天彦は手強い≫
 焦りが読み抜けを生じさせた。


 確かに佐藤天八段は強い。
 しかし、私が断じるのは恐れ多いが、総合的には羽生名人の方が強い。
 だから、一気に決めるのではなく、最善を追及すればよい。
 ≪手の多い複雑な局面、何を指したらいいのか分からない自分の方向感覚が問われる局面で、読み勝とう!≫
 消耗なんて考えず、
 ≪1週間掛かっても勝つ≫

 ぐらいの気持ちで良いのである。


 
 封じ手の候補手は①▲7四歩、②▲5八金、③▲5八玉、④▲1七桂、⑤▲8六飛などあるが、どれも苦しそう。おそらく、≪どの手が一番勝負に持ち込めるか≫を1時間30分余り、苦悩していたのではないだろうか?

 封じ手は▲5八玉。
 ≪6八玉型は間違えていました≫
という手で、しかも、この手はもう一手▲6八銀と指さないと効果が出ない指し手だ。(こういう手を指せることも羽生名人長所とも言えるのだが)
 このほぼ2手損が大きく、局勢に後れを取り、追いつくことはできなかった。
 飛車が2筋にいない事でと金を作られ、6八玉方を修正しようとしたが、それも間に合わないという冴えない負け方だった。

 蛇足だが、▲行方八段-△佐藤天八段戦も本譜と同様な展開となったが、まだこちらの方が勝機を見いだせるように思える。


 先手番を落としての1勝2敗は非勢だが、後手番でのブレイクのチャンスは2度残されており、羽生名人が本来の将棋を指せば、充分防衛は可能であろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする