今回のスペシャル、season1を引き継いでおり、season2の範疇に含まれるようだが(番組サイトでもseason2で紹介されている)、“4月10日スタート”と銘打って“第1話拡大スペシャル”となっているので、微妙な扱いだ。
サブタイトルは「特捜班最後の事件」だが、すぐseason2スタートするので、危機感は薄い。もしかすると、班長・宗方(寺尾聰)が引責辞任するのかなと思ったが、それもなかった。
『警視庁捜査一課9係』の最終シーズンから渡瀬さんがいなくなり、ドラマの魅力が減少し、その存在の大きさを感じることになってしまっt。
しかし、ドラマの魅力減少の要因はそれだけではなく、むしろ、脚本の劣化が大きいような気がする(ごめんなさい)。
脚本の劣化は数シーズン前から感じていた。このシリーズの魅力は渡瀬さんを核にしつつも、9係の個性的な面々が奔放に動き回り、その掛け合いが絶妙な点だった。その息の合い方は健在なのだが、少々マンネリ感が徐々に大きくなってきていた。まあ、それは長期シリーズの宿命で、マンネリも一つの魅力であろう。ただし、倫太郎(渡瀬恒彦)が抜けた分、浅輪(井ノ原快彦)がそれをカバーする役目を担っているので、必要以上に浅輪が“できる刑事”になっているのが、却って魅力減少につながっているように思う。
それよりも問題なのは、事件そのものの構造(動機、殺害方法、証拠など)が劣化してきているのが大きい。このドラマに限らず、ネタ切れ気味、さらに文明の利器(スマホ、防犯カメラなど)や科学捜査自体も進歩し、アリバイ工作や殺害方法の偽装などがしにくくなってきている。さらに、『警視庁捜査一課9係』(『特捜9』)は、青柳(吹越満)&矢沢(田口浩正)コンビ、志保(羽田美智子)&村瀬(津田寛治)コンビ、浅輪&倫太郎or新藤(山田裕貴)コンビが別観点から捜査するので、脚本的にも難易度が高い。
そんな理由で、脚本家さん自体も疲弊しているのではないだろうか……
……とは言え、
season1、そして今回のスペシャルは酷い………
1.犯人の気持ちが理解不能
「私にはあなたの気持ちが理解できない。なぜ、あなたが小柳検事長に夢を持ち、人生を懸けたのか?
あなたにとって小柳検事長は親の仇だったんですよね」(by宗方)
①石田美里(山本千尋)の小柳に対する狂信ぶりを表す台詞
「この人となら、正義を貫ける」
「《小柳法子を検察のトップに立たせること》…それが私の夢だった。その夢を邪魔するものはたとえ誰であっても、排除するしかなかった」
「黙れっ!あなたはこんな事で、こんな男たちに屈する女であっては、ならないっ!」(崇拝する小柳を怒鳴る始末)
②美里と小柳の因縁
美里の実の父に強姦されたという話をでっちあげ、死に追いやったのが当時高校生だった小柳
警察官だった美里の育ての父は、けんかの仲裁に入った際、刺されて死亡したが、刺した犯人(未成年)が大物代議士の親戚だったため、
不起訴となった。→警察ではなく検察に進むべきだと思った
③完全にトチ狂っている価値観
「実の父の仇であっても、育ての父、警察官の父の無念を晴らすには、小柳法子を守るしかなかった」
(“父の仇である自分をなぜ美里が守ったのか?”と訝しがる小柳に対し)
「あなたにはそれだけの価値がある…とそう思ったんでしょうね」(by桃子・名取裕子)
えっ!
実の父を死に追いやったというのに、のうのうと検事になり、そのことをネタに脅され暴力団員に情報を漏らしていたというのに、どのような価値を見出したのだろうか?
そんな女を守って正義を貫け、義父の無念を晴らせると思う根拠は何か?
そもそも、正義を貫こうと思うなら、自分が検事になるべきではないだろうか?
事件の謎を明かすのが刑事ドラマだが、真相が分かっても、犯人の心理は謎が深まるばかり…
真相の究明についても、粗がある
・事件の鍵が、鎌倉(小柳の高校時代)にあることに気付かせる木くずが、販売されている製品に付いていたと有り得ない
・5年前の黒山検事の転落死は検察事務官の石田美里(山本千尋)が突き落としたモノだった(過失致死)。美里はこの件の証拠の提示を求めたが、小柳検事長が観念して認めてしまったため、言及なし
・3件の刺殺(1件は未遂)についての目撃証言や防犯カメラ、目隠しに使用した布テープなどの検証・捜査は無し。凶器も見つけず
小賢しい小細工
・事件を派手で意味深にするため、被害者に布テープで目隠してテミス像を連想させた
・(刺されて意識不明の新藤のいる病院の待合室で)
「浅羽さん、必ず見つけ出してください、犯人を」……自分が殺っておいていけしゃあしゃあとよく言えたものだ
無理やり“いい話”
・美里が正確に急所を外して刺したため、死ななかった
……助かったとはいえ、意識不明の重体にまで陥っていたんだよ!“優しさ”(by浅輪)もクソもない
・「潔く、検事の職を辞すること…今のあなたに出来るのは、それだけ」(by桃子)
「はい」(by小柳)
……あれだけ罪を重ねておいて、“潔く”もクソもないだろう
冒頭の格闘シーンも何だかなあ…
(説明、省略)
前シリーズの時も感じたが、
深沢正樹氏の脚本、拙…(省略)
【ストーリー】番組サイトより
5年前の巡査部長夫妻殺害と1年前の警部補殺害の容疑で暴力団、龍丸会の会長・田野崎を逮捕した警視庁捜査一課特捜班。取り調べを進めるが、主任の直樹(井ノ原快彦)は、妙に素直に取り調べに応じ、ついには全面自供までした田野崎の態度が腑に落ちない…。
時を同じくして、警察庁審議官の桃子(名取裕子)が特捜班を訪ねてくる。相談があって警視総監・神田川(里見浩太朗)を訪ねたら、特捜班のところへ行けと言われたという。桃子は、ナイフを持った男に襲われた大学の後輩で検察庁・検事長の法子を守ってほしいと言い、直樹らが警護と襲撃犯の捜査をすることに。しかし、班長・宗方(寺尾聰)は桃子が何か隠しごとをしていると感じていた…。
早速、検察庁を訪れた直樹と新藤(山田裕貴)は、検察事務官の美里から、法子を襲った男を裏で操っているのは元検事長の杉浦だと告げられる。杉浦は自分の不倫スキャンダルを法子がジャーナリストの千夏にリークしたと思い込んで、逆恨みしていると言うのだ。さらに、杉浦は、龍丸会から分裂して巨大勢力になった帝都龍丸会の顧問弁護士をしているので、犯人は帝都龍丸会の構成員に違いないと憤る美里を、法子は検事長らしく“憶測だけで語ることは許されない”と、いさめる。
一方、法子の襲撃現場の防犯カメラの映像を見ていた志保(羽田美智子)と村瀬(津田寛治)は、慌てて立ち去る女を発見。それは杉浦の不倫スキャンダルの相手で銀座のクラブのママ・涼香だった。
数日後、特捜班に涼香が殺されたという連絡が。背中を刺され、布で目隠しされた涼香の遺体を目にした直樹らは、目隠しは犯人が何かを暗示しているのではないかと疑う。さらに、青柳(吹越満)と矢沢(田口浩正)の捜査で、涼香は十年前に龍丸会の会長・田野崎の愛人だったことが判明する。
涼香が何らかの理由で法子に接触しようとしていたこともあり、警護しながら法子の周辺も探ることになった特捜班。捜査にかこつけ、実は一目惚れしていた美里に話を聞きに行った新藤だが、龍丸会の男を見掛け、彼女と別れて尾行を開始する。するとその時、何者かが新藤の背中を刺した…!
新藤も涼香と同様に布で目隠しされていたと知った直樹が、この目隠しは裁判において先入観をもたないという理念を表すテミス像を暗示しているのではないかと考え始めた矢先、新たな被害者が!
脚本:深沢正樹
監督:鈴木浩介