今週は視覚の死角を突いたトリックだった。
人間は超低速の動きや変化を知覚できないらしい。映像クイズでもよく出題されていて、「アハ体験」と言うと思い当たる方も多いかもしれない。「アハ体験」というのは、今まで分からなかったことを、いろいろ頭を働かせて分かるようになったという体験で、いわゆる「ひらめいた」という感覚である。
今回は切り出しと言う舞台セットの陰に隠れながら、秒速0.2mの低速で移動し、200人の観衆の目という密室をすり抜けたトリックだった。
文字で書くと、非常に馬鹿馬鹿しいが、映像では説得力があり、面白いトリックだった。映像に向かなかった先週のトリックとは対照的だ。何気なく、オープニングの問題提起のシーンにこのトリックが盛り込まれていたのも巧妙だった。
とは言え、観客の目はともかく、スタッフの誰も気づかないのはかなり無理を感じる。キャストがずっと舞台にいるのも不自然だし、当然、裏方もいるはずだから。
それに、もし、トリック成立の条件を満たしていたとしても、舞台上の誰かが気づく可能性はかなり高い。
もし気づかないとしても、80分間も気づかれる恐れを抱きながら、あの低速運動をするのは、肉体的にもすごいが、強靭な精神力だと言える。常人ではとても耐えられそうにない。
そこまでの精神力があるのなら、殺人など犯さずに、ゴーストライターの件を公表してやり直すこともできたのではないか。長年苦楽をともにした仲間を手にかけること、また、人の弱みを握り脅すような卑劣な人間のために一生を懸けて行う行為でもない
。……なんて言っていたら、刑事ドラマにならないか。
【その他の突っ込み・感想】
①芹沢(佐藤浩市)の日和見主義は相変わらず面白い。水城日本企業法務弁護士協会会長(清水紘治)に調子のよい話の合わせっぷりは見事。
「チーム榎本」への冷め方や自分本位さも面白いが、子供っぽさが影を潜めたのは少し残念。
②(たぶん多くの方が指摘していると思うが)登場人物の名前の鬼塚、薬師寺、畑山、井岡は、ボクシングつながり。
③「下手(しもて)の楽屋」が最初、「下手(へた)の楽屋」かと思った
④「今回の密室は破れないかもしれない」と榎本(大野智)が言ったのは、予告用?
⑤鬼塚が舞台のトリックが「物理的なトリック」だったのに、「心理的なトリック」と間違えたのは、仮にも脚本担当のうえ、舞台にも関わっているのだから、間違えるのはありえない
【ストーリー】(番組サイトより)
榎本径(大野智)は、青砥純子(戸田恵梨香)に誘われて、水城里奈(能年玲奈)が出演する「密室に囚われた男」という舞台を見に来た。それは、パフォーマンスと演劇に分かれた舞台だった。
観劇後、下手(しもて)の楽屋に里奈を訪ねると劇団員たちの様子が慌ただしい。楽屋で薬師寺(山中聡)というパフォーマーが撲殺されていたのだ。
その後、容疑者に里奈の恋人でパフォーマーの井岡(桐山照史)が浮上した。純子から事件のことを聞いた芹沢豪(佐藤浩市)は、度重なる密室事件にうんざりしながら、榎本を呼べと指示する。
榎本、純子、里奈が劇場を訪ねると演出の畑山(堀内敬子)、脚本家兼パフォーマーの鬼塚(坂本昌行)が迎えた。純子は、楽屋には上手(かみて)と下手があるのに、なぜ薬師寺だけが下手にいたのか、と尋ねる。鬼塚はそこが薬師寺専用になっていたと明かす。薬師寺の楽屋に行くには、売店があるロビーを通るか、舞台上を横切るしか方法がない。しかし事件発生時、演劇が上演中で客席には200人の観客がいた。外部からの侵入の形跡もない密室状態だった薬師寺の楽屋に、犯人はどうやって侵入して殺害し、誰の目にも触れず逃走できたのか。
現場検証を続けた榎本は、今回の密室は破れないかもしれない、と言った。
里奈に頼んで井岡に会った純子は、井岡のカバンに「密室の作り方」という本があるのに気づいた。役作りのために必要だという井岡に、パフォーマーなのになぜか、と純子が尋ねると、井岡は焦りながらももっともらしい答えを返した。
同じ頃、榎本のもとに鬼塚が現れた。次の舞台の題材で防犯ネタを使いたいという鬼塚は、榎本に質問があるという。そんなとき、榎本が前回の舞台のトリックをどう思いついたのかと尋ねた。鬼塚は、自分のアイデアから心理的なトリックが浮かんだ、と答えたが、舞台で使われたのは物理的なトリックだった。
榎本からそう聞いた純子は、前回の舞台の脚本を鬼塚ではなく井岡が書いたのでは、と推測。そして、井岡を問い詰めたところ、鬼塚と自分がお互い了承済みのことだ、と言ってそれを認めた。
純子は犯行を行ったのが鬼塚だと仮定すれば、密室を破る方法が絞れるのでは言う。榎本は、最後にパフォーマンスを終えた鬼塚が密室を作る時間は、演劇が上演されていた80分あったことになると話す。舞台上で何か工作したとしたら自分たちが気づいたはずなのに、という純子の言葉に榎本はひらめきを感じた。
再び劇場にやってきた榎本は、舞台上でスローモーションのような動きをしている鬼塚を見つめた。そして、車に戻ると舞台の映像を分析し始めた。
その頃、純子は、畑山から重要な証言を聞き劇場へとやってきた。誰ひとりいない舞台上で、鬼塚を探す純子。その後ろに、足音も立てず鬼塚が立った。気配に気づき純子が振り返ると、鬼塚は無言で純子を見詰めた。得の言われぬ恐怖に包まれたとき、ドアが開き、榎本、芹沢が入ってきた。安堵した純子に、榎本は「密室は、破れました」と言った。
榎本は、パフォーマンスを終えた鬼塚が楽屋で薬師寺を撲殺、その後、舞台上の切り出しと呼ばれるセットの後ろに隠れ、自分で移動させながら舞台上を横切った、と明かした。鬼塚が得意なスローモーションのような動きで、非常にゆっくりと移動すると、人間の目はそれを認識できないと言う。舞台の画像を早送りしてみると、確かに舞台の奥で切り出しが横切るのが確認できた。
殺意はあったのかと聞く芹沢に、鬼塚は、事故だったと弁明。しかし榎本は、舞台上に切り出しを何度も引きずった傷があることから、何日も練習を重ねて犯行に及んだはずだと指摘。それでも動機がない、という鬼塚に純子は、畑山から聞いたと言って、井岡をゴーストライターに使っていたことで、鬼塚が薬師寺に脅されていたと明かした。遂に言い逃れができなくなったが、それでも鬼塚はどこか平然としていた。
後日、純子から舞台の誘いを受けた榎本は、携帯電話をスピーカーにしたまま話していた。開錠作業中の榎本は、純子の言葉にも応えず没頭し…。
人間は超低速の動きや変化を知覚できないらしい。映像クイズでもよく出題されていて、「アハ体験」と言うと思い当たる方も多いかもしれない。「アハ体験」というのは、今まで分からなかったことを、いろいろ頭を働かせて分かるようになったという体験で、いわゆる「ひらめいた」という感覚である。
今回は切り出しと言う舞台セットの陰に隠れながら、秒速0.2mの低速で移動し、200人の観衆の目という密室をすり抜けたトリックだった。
文字で書くと、非常に馬鹿馬鹿しいが、映像では説得力があり、面白いトリックだった。映像に向かなかった先週のトリックとは対照的だ。何気なく、オープニングの問題提起のシーンにこのトリックが盛り込まれていたのも巧妙だった。
とは言え、観客の目はともかく、スタッフの誰も気づかないのはかなり無理を感じる。キャストがずっと舞台にいるのも不自然だし、当然、裏方もいるはずだから。
それに、もし、トリック成立の条件を満たしていたとしても、舞台上の誰かが気づく可能性はかなり高い。
もし気づかないとしても、80分間も気づかれる恐れを抱きながら、あの低速運動をするのは、肉体的にもすごいが、強靭な精神力だと言える。常人ではとても耐えられそうにない。
そこまでの精神力があるのなら、殺人など犯さずに、ゴーストライターの件を公表してやり直すこともできたのではないか。長年苦楽をともにした仲間を手にかけること、また、人の弱みを握り脅すような卑劣な人間のために一生を懸けて行う行為でもない
。……なんて言っていたら、刑事ドラマにならないか。
【その他の突っ込み・感想】
①芹沢(佐藤浩市)の日和見主義は相変わらず面白い。水城日本企業法務弁護士協会会長(清水紘治)に調子のよい話の合わせっぷりは見事。
「チーム榎本」への冷め方や自分本位さも面白いが、子供っぽさが影を潜めたのは少し残念。
②(たぶん多くの方が指摘していると思うが)登場人物の名前の鬼塚、薬師寺、畑山、井岡は、ボクシングつながり。
③「下手(しもて)の楽屋」が最初、「下手(へた)の楽屋」かと思った
④「今回の密室は破れないかもしれない」と榎本(大野智)が言ったのは、予告用?
⑤鬼塚が舞台のトリックが「物理的なトリック」だったのに、「心理的なトリック」と間違えたのは、仮にも脚本担当のうえ、舞台にも関わっているのだから、間違えるのはありえない
【ストーリー】(番組サイトより)
榎本径(大野智)は、青砥純子(戸田恵梨香)に誘われて、水城里奈(能年玲奈)が出演する「密室に囚われた男」という舞台を見に来た。それは、パフォーマンスと演劇に分かれた舞台だった。
観劇後、下手(しもて)の楽屋に里奈を訪ねると劇団員たちの様子が慌ただしい。楽屋で薬師寺(山中聡)というパフォーマーが撲殺されていたのだ。
その後、容疑者に里奈の恋人でパフォーマーの井岡(桐山照史)が浮上した。純子から事件のことを聞いた芹沢豪(佐藤浩市)は、度重なる密室事件にうんざりしながら、榎本を呼べと指示する。
榎本、純子、里奈が劇場を訪ねると演出の畑山(堀内敬子)、脚本家兼パフォーマーの鬼塚(坂本昌行)が迎えた。純子は、楽屋には上手(かみて)と下手があるのに、なぜ薬師寺だけが下手にいたのか、と尋ねる。鬼塚はそこが薬師寺専用になっていたと明かす。薬師寺の楽屋に行くには、売店があるロビーを通るか、舞台上を横切るしか方法がない。しかし事件発生時、演劇が上演中で客席には200人の観客がいた。外部からの侵入の形跡もない密室状態だった薬師寺の楽屋に、犯人はどうやって侵入して殺害し、誰の目にも触れず逃走できたのか。
現場検証を続けた榎本は、今回の密室は破れないかもしれない、と言った。
里奈に頼んで井岡に会った純子は、井岡のカバンに「密室の作り方」という本があるのに気づいた。役作りのために必要だという井岡に、パフォーマーなのになぜか、と純子が尋ねると、井岡は焦りながらももっともらしい答えを返した。
同じ頃、榎本のもとに鬼塚が現れた。次の舞台の題材で防犯ネタを使いたいという鬼塚は、榎本に質問があるという。そんなとき、榎本が前回の舞台のトリックをどう思いついたのかと尋ねた。鬼塚は、自分のアイデアから心理的なトリックが浮かんだ、と答えたが、舞台で使われたのは物理的なトリックだった。
榎本からそう聞いた純子は、前回の舞台の脚本を鬼塚ではなく井岡が書いたのでは、と推測。そして、井岡を問い詰めたところ、鬼塚と自分がお互い了承済みのことだ、と言ってそれを認めた。
純子は犯行を行ったのが鬼塚だと仮定すれば、密室を破る方法が絞れるのでは言う。榎本は、最後にパフォーマンスを終えた鬼塚が密室を作る時間は、演劇が上演されていた80分あったことになると話す。舞台上で何か工作したとしたら自分たちが気づいたはずなのに、という純子の言葉に榎本はひらめきを感じた。
再び劇場にやってきた榎本は、舞台上でスローモーションのような動きをしている鬼塚を見つめた。そして、車に戻ると舞台の映像を分析し始めた。
その頃、純子は、畑山から重要な証言を聞き劇場へとやってきた。誰ひとりいない舞台上で、鬼塚を探す純子。その後ろに、足音も立てず鬼塚が立った。気配に気づき純子が振り返ると、鬼塚は無言で純子を見詰めた。得の言われぬ恐怖に包まれたとき、ドアが開き、榎本、芹沢が入ってきた。安堵した純子に、榎本は「密室は、破れました」と言った。
榎本は、パフォーマンスを終えた鬼塚が楽屋で薬師寺を撲殺、その後、舞台上の切り出しと呼ばれるセットの後ろに隠れ、自分で移動させながら舞台上を横切った、と明かした。鬼塚が得意なスローモーションのような動きで、非常にゆっくりと移動すると、人間の目はそれを認識できないと言う。舞台の画像を早送りしてみると、確かに舞台の奥で切り出しが横切るのが確認できた。
殺意はあったのかと聞く芹沢に、鬼塚は、事故だったと弁明。しかし榎本は、舞台上に切り出しを何度も引きずった傷があることから、何日も練習を重ねて犯行に及んだはずだと指摘。それでも動機がない、という鬼塚に純子は、畑山から聞いたと言って、井岡をゴーストライターに使っていたことで、鬼塚が薬師寺に脅されていたと明かした。遂に言い逃れができなくなったが、それでも鬼塚はどこか平然としていた。
後日、純子から舞台の誘いを受けた榎本は、携帯電話をスピーカーにしたまま話していた。開錠作業中の榎本は、純子の言葉にも応えず没頭し…。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます