「のらりくらり ……中田七段作詰将棋 『将棋世界』2014年4月号」の解答です。
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一見すると、4一の銀が玉の両側を、また、上部は5五の銀と3六の桂が待ち構えているので、普通に攻めれば詰みそうです。
ですが、玉が5一、3四、2二への逃走経路が残されているうえ、持駒は仮名駒枚と豊富なのですが、金が一枚なので、意外と玉を捕まえきれない状況に陥る危険性があります。
初手は、▲5一銀、▲4三銀、▲3三銀などが浮かびます。
試しに▲5一銀を考えてみましょう。
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上部に逃がすようですが、5一への逃走手段を消し、玉の行動を限定させる効果もあります(△5一同玉と取ると▲5二金で詰み)。
△4三玉は▲4四金で詰むので、△3三玉と逃げます。
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順調のようですが、この3三の玉は3四と2二への2つの逃走経路があるため、片方を防ぐともう片方に逃げられてしまうというジレンマに陥ってしまっているのです。
▲4四銀は5五の銀を活用して効率の良い手です。
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△3四玉ならば▲3五金(銀)でも▲3三金でも詰むのですが、
△2二玉と逃げられると
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1筋の逃走を防げません。
そこで、試行図2で
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▲3二金と2二への逃走を防ぎますが、
△3四玉と逃げられると
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やはり、捕まえられません。
△3三玉と逃げられた時、2二と3四の二か所をフリーにしておくのは、まずいようです。
初手は▲4三銀。
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この手は、△4三同玉とされた場合は初手▲5一銀より、5一銀が残らない分だけ劣るのですが、▲4四銀打で、△3四玉なら▲3五金で、また、△4二玉には▲5二金で詰みます。
また、初手▲4三銀に△同桂と取るのには、桂がいなくなった場所に銀を打つ▲3一銀がぴったりの手になります。
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取るのは▲3二金で簡単なので△3三玉と逃げますが、
3一の銀が2二への逃走を許さないので▲4四銀で大丈夫です。
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仕方なく△3四玉と逃げます。
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さて、あとは簡単と、▲3五金と打ってしまうと△3五同桂と取られて、飛び上がることになります。
ここは慌てず、▲3三金が正着で詰みます。
【訂正です】
▲4三銀△同桂▲3一銀△3三玉の時、▲4四銀△3四玉▲3三金までの詰みと書きましたが、単に▲4四金で詰みます(shiroさんよりご指摘がありました。ありがとうございました)
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というわけで、初手▲4三銀には△3三玉と最強の逃げ方をします。
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この局面が悩ましいのです。
▲3二銀行成、▲3二銀引成、▲3四金、▲3四銀打、▲2四銀、▲4二銀不成など多数の手段が考えられます。
しかし、どれもうまくいきません。
他にもいろいろ考えたのですが、うまく行かず、初図に戻る……
そして、何度目かの第2図を考えた時、突然、▲3二金が浮かびました。
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この金は打ちにくい。何しろ、▲3二銀行成や▲3二銀引成で済むところをわざわざ金を打つのですから。
しかも、△4三玉と銀まで取られてしまいます。
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しかし、ここで▲4四銀打として
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△3四玉に▲3三金で詰んでしまいます。
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3手目の▲3二金が打ちづらく(候補手にも上がらない)、さらに▲3三金の詰上がりも浮かびにくいのです。
3三には通常、玉方の桂の利きがあるのが頭にこびりついているからかもしれません。
少しくどくなりますが、初手▲5一銀と▲4三銀の差を考えます。
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この両図の違いは、4三の銀の有無です(厳密には5一の銀の有無)。
この4三の銀は、▲3二金と打っても取られるだけですが、いないと失敗図2のように
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△3四玉と逃げられて失敗しました。
4三の銀は、取られてしまいますが、一時的ですが3四に玉を逃がさないという非常に大きな働きをしていたのでした。
詰手順……▲4三銀△3三玉▲3二金△4三玉▲4四銀打△3四玉▲3三金まで7手詰
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一見すると、4一の銀が玉の両側を、また、上部は5五の銀と3六の桂が待ち構えているので、普通に攻めれば詰みそうです。
ですが、玉が5一、3四、2二への逃走経路が残されているうえ、持駒は仮名駒枚と豊富なのですが、金が一枚なので、意外と玉を捕まえきれない状況に陥る危険性があります。
初手は、▲5一銀、▲4三銀、▲3三銀などが浮かびます。
試しに▲5一銀を考えてみましょう。
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上部に逃がすようですが、5一への逃走手段を消し、玉の行動を限定させる効果もあります(△5一同玉と取ると▲5二金で詰み)。
△4三玉は▲4四金で詰むので、△3三玉と逃げます。
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順調のようですが、この3三の玉は3四と2二への2つの逃走経路があるため、片方を防ぐともう片方に逃げられてしまうというジレンマに陥ってしまっているのです。
▲4四銀は5五の銀を活用して効率の良い手です。
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△3四玉ならば▲3五金(銀)でも▲3三金でも詰むのですが、
△2二玉と逃げられると
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1筋の逃走を防げません。
そこで、試行図2で
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▲3二金と2二への逃走を防ぎますが、
△3四玉と逃げられると
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やはり、捕まえられません。
△3三玉と逃げられた時、2二と3四の二か所をフリーにしておくのは、まずいようです。
初手は▲4三銀。
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この手は、△4三同玉とされた場合は初手▲5一銀より、5一銀が残らない分だけ劣るのですが、▲4四銀打で、△3四玉なら▲3五金で、また、△4二玉には▲5二金で詰みます。
また、初手▲4三銀に△同桂と取るのには、桂がいなくなった場所に銀を打つ▲3一銀がぴったりの手になります。
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3一の銀が2二への逃走を許さないので▲4四銀で大丈夫です。
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仕方なく△3四玉と逃げます。
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さて、あとは簡単と、▲3五金と打ってしまうと△3五同桂と取られて、飛び上がることになります。
ここは慌てず、▲3三金が正着で詰みます。
【訂正です】
▲4三銀△同桂▲3一銀△3三玉の時、▲4四銀△3四玉▲3三金までの詰みと書きましたが、単に▲4四金で詰みます(shiroさんよりご指摘がありました。ありがとうございました)
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というわけで、初手▲4三銀には△3三玉と最強の逃げ方をします。
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この局面が悩ましいのです。
▲3二銀行成、▲3二銀引成、▲3四金、▲3四銀打、▲2四銀、▲4二銀不成など多数の手段が考えられます。
しかし、どれもうまくいきません。
他にもいろいろ考えたのですが、うまく行かず、初図に戻る……
そして、何度目かの第2図を考えた時、突然、▲3二金が浮かびました。
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この金は打ちにくい。何しろ、▲3二銀行成や▲3二銀引成で済むところをわざわざ金を打つのですから。
しかも、△4三玉と銀まで取られてしまいます。
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しかし、ここで▲4四銀打として
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△3四玉に▲3三金で詰んでしまいます。
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3手目の▲3二金が打ちづらく(候補手にも上がらない)、さらに▲3三金の詰上がりも浮かびにくいのです。
3三には通常、玉方の桂の利きがあるのが頭にこびりついているからかもしれません。
少しくどくなりますが、初手▲5一銀と▲4三銀の差を考えます。
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この両図の違いは、4三の銀の有無です(厳密には5一の銀の有無)。
この4三の銀は、▲3二金と打っても取られるだけですが、いないと失敗図2のように
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△3四玉と逃げられて失敗しました。
4三の銀は、取られてしまいますが、一時的ですが3四に玉を逃がさないという非常に大きな働きをしていたのでした。
詰手順……▲4三銀△3三玉▲3二金△4三玉▲4四銀打△3四玉▲3三金まで7手詰
この場合2手目はどちらでも正解でしょうか。
そうでした。ご指摘の点について、記述するのを忘れていました。
詰将棋の玉方は、「最善の逃げ方(守り方)」をするという決まりがあります。
最善の逃げ方とは、
・(これは言うまでもないことですが)頓死をしない。
詰め方が間違って詰まない手を指したのに、受け方を間違って詰んでしまわない。
・手数が最長になるよう逃げる。この場合、無駄な合駒をして手数を稼ぐのは無効。
・詰め方の持駒が余らないよう受ける。
同手数で、手順Aは駒が余らず7手詰、手順Bは駒が余って7手詰。この場合、手順Aが最善を尽くしたと考えるわけです。
本作の場合、2手目△4三同桂としても7手詰で駒が余らないので、最善の逃げ方といえます(正解手順)。
正解手順が複数ある場合、作者が表現したい手順の方を「作意手順」として、正解手順の代表として表記します。
厳密に言えば、正解手順が複数あるので、作品としては少し不満(キズ)があると言えます(この考え方は、人によって違う)。
あと、駒が余って正解(作意)手順より2手長く詰むという作品があります。これはキズと考えられますが、作品としては成立すると考えます。
秀さん詳しい解説ありがとうございました。
確かに2手目は3三玉が詰め将棋らしい手順ですので。
でも簡単にわかる傷なので再度考えてみました。
2手目△4三同桂では以下▲3一銀△3三玉△4四金(打)までの5手詰めになりますね。
5手目の4四金が盲点になってました。
>2手目△4三同桂では以下▲3一銀△3三玉△4四金(打)までの5手詰めになりますね。
>5手目の4四金が盲点になってました。
▲4四銀~▲3三金が目に入ってしまい、単純な▲4四金が全く見えませんでした。お恥ずかしい。
中田先生、作品の価値を下げるような変な解説をしてしまい、申し訳ありませんでした。