英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

憤りを感じる敗局 2017王位戦第4局

2017-08-23 22:31:07 | 将棋
 表題は言い過ぎかもしれないが、もし、現地に応援に行っていたらと怒りを感じるのではないだろうか。……惨敗。


 図は第1日の指了図。
 先手玉は異形で桂馬で銀取りが掛かっているが、陣形全体の防衛力があり、寄りつくのは難しい。
 対する後手玉は美濃囲いで安泰に見えるが、馬を作られ飛車が取られる寸前。
 羽生王位も1時間8分考えて手を封じた。局面を進めず、一晩掛けて打開策を練るのかもしれない。私も考えたが、光明が見えない。暗い気持ちで床に就いた。

 2日目、何とか先手陣に食いつき、飛車も逃げて、突破口を見出そうとするが、先手・菅井七段の端からの攻めが厳しく、見せ場もなく投了に追い込まれてしまった。
 一日目の開戦の周辺、2日目の土俵の割り方からは、羽生王位の構想力、柔軟性、視野の広さ、読みの深さが全く感じられなかった。
 王位戦第3局やA級順位戦対広瀬戦、対久保戦では精密と呼べる強さを感じたが、最近は不出来な将棋も増えてきた。タイトル戦でも“惨敗”が見られるようになったが、本局はその惨敗の中でも最底辺にあるように思える。


 
 それにしても不可解な開戦だった。

 △4五歩と突けば、▲3三角成△同桂に▲8八角と反撃を受けるのは目に見えている。
 それに対し、平凡に△2三飛▲4五桂△同桂と進め、▲4五同歩に香取りを受ける△2一飛と後手を引き、▲3三角成と馬を作られてみると、後手の飛車が息苦しいことこの上ない。
 仕掛けたからには△4五銀と銀を進出させるが、先手陣への響きは小さく、普通に打つ▲4四桂が痛すぎる。
 △6五桂と勝負を挑むが、金を取らずに▲3二桂成(第3図・第1日指了図)が好手で、辛い長考を強いられることになってしまった。


 いったい、△4五歩の開戦にどういった成算を持っていたのだろうか?
 局後、「待つ手もあまり……」と羽生王位が漏らしていたようだが、待つ手はあったし、先手は後手以上に指し方が難しかったように思う。
 それに、第2図以降の待つ展開が不満なら、その前の第1図で△6五銀と揺さぶりを掛けるなどの動きを見せるべきだった。

『「△6五銀▲7七金△4五歩▲6六歩△5四銀▲6七金△6四歩でどうでしょうか。後手は4五の位が安定するのが大きいです」(A奨励会三段)
後手は△6五歩からの開戦を狙う順だ。先手は▲4六歩から駒組みを進めたいが、4五の位がそれを許さない。』
【棋譜中継の解説より引用】


 
以下は気になった局面

 「図で△3一金で互角」と巷のソフト使いたちが騒いでいた(もしかしたら、別の局面だったかもしれませんが)
この△3一金は≪何とかと金攻めを堪え飛車を捌き、その折衝で手に入れた桂を攻めに使おう≫という意図らしい。どなたか、この手の成否を教えてください。

『△3一金があった。以下、(A)▲3一同成桂なら△同飛▲2二馬△5一飛▲3二馬に△5四角で先手も大変。(B)▲7七桂は△3二金▲同馬△5四角▲3三馬△3六角▲4七銀△5四角。
羽生「訳がわからないですよね。あまりいい感じではありませんが、このほうが粘りがありましたか」』
【棋譜中継解説より引用】



 王手で▲6六馬と引きたくなるが、▲7七馬と引いた。
 後手の7八の銀を攻め、△6九銀打を強要し、以下▲同飛△同銀不成▲同玉と銀2枚を手に入れ、戦力を増強。強いなあ。


 華麗な桂跳ね。「これで受けがありません」と今泉四段。△同玉なら▲8二銀で寄り。
 菅井七段もほぼ終了と思っていたようだが、実際にはまだまだ難しいところがあったようだ。
 羽生王位は△8二金と受けたが、△9二玉と引く勝負手があったようだ。

『羽生「ええーっ、世の中にそんな手が……」
以下、▲8二銀△7二金(変化図1)▲9三歩△同桂に(1)▲7一銀成△同金▲4三歩△6二竜▲4一飛△8五桂(変化図2)まで並ぶと、「だんだん怪しくなってきたね」と立会人の森けい九段。続けて▲6六馬△9三歩▲7七桂打△同桂不成▲同桂△8四香(変化図3)でハッキリしない。
羽生「そうですね。これは結構粘りがいがある。もちろん、いいとは言いませんが。そうか、駒を使ってはダメなのか」
また、菅井は(2)▲9三同銀成の変化も分からないという。後手玉は王手で追われても、下に逃げれば自陣の竜と飛車が守りによく利く。』
【棋譜中継解説より引用】



 実戦の△8二金も菅井七段は軽視していたという感想があり、▲9四桂は決め手には至っていなかったようだ(直前の▲5九金では▲5八玉が良かったらしい)。
 ▲9四桂(第6図)以下、△8二金▲8五桂△9二玉▲9三歩△同桂▲同桂成△同金▲8二銀△9四玉▲7一銀成と進んだ第7図。


『△5一竜が有力。以下、(1)▲9五歩は△8四金で後続が難しい。羽生は(2)▲8一飛を気にして本譜を選ぶも、△9三角▲8五桂(変化図4)△7一竜(以下、▲9三桂不成は△8一竜▲同桂成△同玉(変化図5)でサッパリする)で大変だった。(3)▲8六桂△7一竜▲9四桂△9三銀の進行も後手が粘り強い。
羽生「そうか、なるほど。結構、耐久力があるのですね」
菅井「嫌ですよ」
△5一竜ならば難解な勝負が続く。』
【棋譜中継解説より引用】


 変化図4の▲8五桂に△同金だと▲9四銀で受けなし。△7一龍に▲9三桂成だと△8一玉と飛車を取られてしまうなど、面白い変化が多い。


 控室や感想戦での研究が正しいとは言い切れないが、本局の羽生王位は精彩を欠き過ぎていた。
 感想戦で指摘を受けて、感心や驚きの言葉が多かったのが悲しい。

 ≪菅井七段とは波長が合わないのかもしれない≫と考えるのは、言い訳がましいが……

コメント
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