いまはとて かへすことのは ひろひおきて おのがものから かたみとやみむ
今はとて 返す言の葉 拾ひおきて おのがものから 形見とや見む
近院右大臣
今はもう縁が切れたと、あなたが返してくる手紙を拾い集めて、もともと自分が書いたものではありますが、それをあなたを思い出す形見としましょうか。
0736 に対する返し。「ものから」は逆接を表す接続助詞で、「自分が書いたものなのだからそれを形見にするというのはおかしいけれど」という含意ですね。
作者の近院右大臣(こんゐん の みぎ の おほいまうちぎみ)は平安時代前期の公卿、源能有(みなもと の よしあり)のこと。第55代文徳天皇の皇子で、古今和歌集には三首入集しています。