漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0746

2021-11-14 19:28:54 | 古今和歌集

かたみこそ いまはあたなれ これなくは わするるときも あらましものを

形見こそ 今はあたなれ これなくは 忘るる時も あらましものを

 

よみ人知らず

 

 形見の品こそが今は恨めしいものになってしまった。これさえなければ、あの人のことを忘れられる時もあるだろうに。

 第二句の「あた」が「あだ(徒)」なのか「あた(仇・敵)」なのかでニュアンスが変わります(当時は濁点の表記がありませんので、どちらともとれます)が、歌全体の含意から「あた」と解釈されています。離れて行った人の残した思い出の品が、今となっては「むだなもの」に留まらず「恨めしいもの・仇(かたき)のようなもの」となってしまったというわけですね。
 この、なかなかに激しい歌が巻第十四「恋歌四」の掉尾。明日からいよいよ恋歌の最終巻、巻第十五「恋歌五」のご紹介に入ります。