おほぞらは こひしきひとの かたみかは ものおもふごとに ながめらるらむ
大空は 恋しき人の 形見かは もの思ふごとに ながめらるらむ
酒井人真
大空は、恋しい人の形見なのだろうか。いや、そうではないのに、どうして物思いにふける度におのずと眺められてしまうのだろうか。
第三句の「かは」はいずれも係助詞の「か」「は」の組み合わせで、反語を表します。恋しい人のことを思うたびに思わず大空を眺めてしまうという詠歌。現代語で言えば、「遠い目をする」といったところでしょうか。
作者の酒井人真(さかい の ひとざね)は平安時代前期の官人。勅撰集への入集は、古今集のこの一首のみです。