漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0733

2021-11-01 19:49:31 | 古今和歌集

わたつみと あれにしとこを いまさらに はらはばそでや あわとうきなむ

わたつみと あれにし床を いまさらに 払はば袖や 泡と浮きなむ

 

伊勢

 

  あなたが来てくれなくなって海のように荒れた床を、今更あなたがまた来るかのように袖で払って仕度をしても、払う袖は涙の海に泡のように浮いてしまうことでしょう。

 「あれ」は「荒れ」と「離(あ)れ」の掛詞。「払う」はここでは袖で塵を払う意で、共寝の仕度を意味します。独り寝の寂しさに泣き暮れての床を涙の海に喩え、愛しい人の心離れを嘆く悲しい詠歌です。