いきなり地図の紹介から。
赤線は、函館市電「十字街」から分岐して、終点の「谷地頭」へ向かう路線です。
ではこの緑の線はというと、実は、1936年(昭和11年)までは、市電はこのルートを通っていました。
現在は、三角形の斜辺に当たるルートを通っていますが、それまでは、この線のとおり、直角に折れ曲がるルートだったそうです。
現在の技術をもってしても、このように直角に折れ曲がるのは、なかなか大変で、非効率な感も否めません。
札幌の市電でも同じような経緯を辿っている場所がありましたが、こちらの方は、開設当時は斜辺に当たる道路が整備されていなかったということなのに対し、函館ではそのような事情はなかったようです。
ということは、このようなクランク状にしてまでも路線を通す必要があったということになるわけで、注目すべきは、オレンジ色の丸と、紫色の楕円。
オレンジ色の丸は、かつて電停があった場所とされ、紫の楕円は、その電停ができた理由となっている施設だそうです。
函館市郊外に、「北海道東照宮」という神社があります。
昨年4月に公開されるや否や空前とも言える大フィーバーを巻き起こし、今日1月16日までという超ロングラン上映となっていた「劇場版名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)」にも登場し、聖地巡礼の参拝客が多数訪れたことでも知られていますが、その東照宮が、一時期この地に遷座されていたことがあり、そのために、参拝客の乗降を考慮して、電停が設置されました。
そう、紫の楕円が、かつての東照宮の所在地で、オレンジ色の丸が電停の位置だったのです。
ということで、現在地の様子を見てみましょう。
現在は、この辺りで右カーブになっていて、「谷地頭」方面へ通じています。
ですが、かつては、黒の矢印のとおり、カーブで曲がることなく、直線になっていました。
続いてはこの場所。
赤が現在のルートで、黄色がかつての路線です。
かつての路線を歩いてみましょう。
至って普通の住宅街で、軌道があった痕跡は全く確認できません。
ここで直角に曲がります。
この辺りが電停でした。
そして、写真左奥の黄緑色の外観の建物、現在はグループホーム・デイサービスの施設となっていますが、この辺りに東照宮がありました。
「北海道東照宮」は、その名の通り、「東照大権現」として神格化された徳川家康を祀る神社で、箱館においては、五稜郭が築城された際に、その鬼門守護として、現在地近くに建立されました。
しかし、箱館戦争において、旧幕府軍の守護神であったことから新政府軍の徹底攻撃を受け、御神体は無事だったものの、殆ど全ての施設が焼失の憂き目に遭い、場所を転々とした後、1879年(明治12年)に、写真のこの地に落ち着きました。
市電の「東照宮前」電停は、1913年(大正2年)10月のルート延長により設置されましたが、1936年(昭和11年)の軌道移設工事により廃止となりました。その後も、1992年(平成4年)まで、東照宮はこの地に鎮座し続けましたが、崇敬者の意思により、設立当時の場所に近い現在地に遷座したという歴史を辿っています。
コナンの上映最終日に合わせたわけではありませんが、そういうネタもあるということで、整理して書いてみました。
(現在の「北海道東照宮」)