龍の尾亭<survivalではなくlive>版

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週刊読書人の上半期収穫

2012年07月30日 20時16分14秒 | 書くことについて
週刊読書人の上半期収穫アンケートの中に
トマス・ホッブズ『哲学原論』伊藤宏之・渡部秀和訳(柏書房刊)
が挙げられていた。

ホッブズの研究者は論文書くより、『リバイアサン』以外の主著を訳してくれよ、と周りから言われていた、とのこと。
業界筋の話は知らないが、「我が意を得たり」といったところ。

序文に、21世紀初頭の今だからこそ、読まれなければならない、とある。

その通りだと思う。

私は「近代社会理論」なんかに関心はない。
ただスピノザが読みたい、読めるようになりたいだけだ。
でもそんな素人でさえ、この本の「価値」は分かる。

前のブログの続きになるが、優れた訳というのは、原著に対する明晰な解釈がなければならない。

無論自分勝手であさっての方角の解釈じゃ困る。
でも、現著者の抱える課題や、時代が抱える困難を踏まえた上で、なお、単に言語的に間違っていないのではなく、原著者と問題意識を共有した上での原文に忠実な「訳」が欲しいのだ。

もしかすると原著者さえも著作が完成するまでは輪郭をつかみ得ていなかったかもしれないような「世界像」を、こちら側の言語で、決して単に「代理表象」的に引き写すのではなく、もう一度その問題を日本語で生き直してもらわなきゃならない。

そうでなければ明晰な解釈にはならない。

まだ読み始めたばかり(っていうか1500ページもある哲学書だからいくら読んでも終わらないと思う)だが、その予兆に胸が震えた。

語学的な批判、哲学プロパーの側からの批評をぜひ聞きたいものだ。
でも、この素敵な感触は、じわじわおいしさがにじみ出てくるような気がする。