龍の尾亭<survivalではなくlive>版

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『JR上野駅公園口』柳美里を読了。

2014年07月31日 15時03分08秒 | 大震災の中で
週末に参加する読書会の課題なのでやむなく読んだ。
思ったよりは読みやすかったが、50代も半ばになると自分の「小説観」というかテキストから何を受け取るか、というスタンスが定まってきていて(固定化した、ともいえようか)、

「だから何?」

と思ってしまった。
確かに上野駅公園口の風景は「活写」されている。それでいいなら、それでいいのだろうが、テキストを読む豊穣をそこに感じることはできなかったし、物語としてはもとより話は立ち上がりはしない(それは意図したところでもあろう)。

ただ、読まない方が良かったとも思わなかった。上野公園観光ガイドとしては、意外にいけているかもしれない。変なパンフレットよりは面白いんじゃないかな。

この人の作品は多くの場合、「接着剤」が「柳美里」であることを前提に読まなければならないので、彼女の読者としては「怠惰」な(つまり柳美里なんて人物に興味も関心もない)私は、この電車もまた見送るしかなかった。

そういうことなのだろう。

一点だけ、この主人公の「心情」といえるのかどうか分からないが、「気分」のようなものは共感しないでもない。多くのものを失ってホームレスになってしまうその「道行」は、他人事ではない「気分」にはなった。

しかしそれもまた、作者の手の中にある「気分素」のようなものの圏域を超えるものではないし、別に越えなくてもいいのだけれど、じゃあそこでどう遊べばいいのか……。

まあ、そういう形の商品だって書くのは大変だし、柳美里的市場に応えることの意義はあるに違いない。
私はその対象ではなかった、ということである。