風月庵だより

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夢と時間

2006-10-20 19:36:22 | Weblog
10月20日(金)晴れ【夢と時間】

最近松本零士氏の『銀河鉄道999』の言葉の盗作問題が起きている。歌手の槇原敬之氏がCHEMISTRYの新譜「約束の場所」に使っているフレーズが酷似しているというのである。

松本氏:「時間は夢を裏切らない、夢も時間を裏切ってはならない
槇原氏:「夢は時間を裏切らない、時間も夢を決して裏切らない」

判定や如何に。

さて私はこのところ研究書の出版のことで、忙しくしている。かなりの時間をかけてまとめたものであるが、共著の先生の担当分と合わせてかなりの分量になるのにもかかわらず、一冊の分量を厚くするとコストが高くなってしまうので、多くの部分を削除しなくてはならなくなった。

語注を付けるために、中国や日本の禅語録の中からようやく探し出した一つ一つの引用文を全てというほど削り取らなくてはならないのである。そんな校正作業を今週はしていたのである。

自分のお正月も夏休みも、使える時間は全てこの研究に注いできたのであるが、その時間を捨て去るような、切り取るような苦しさである。300頁の分量を200頁に削るという作業がいかに辛いか、ご想像いただけるだろうか。校正では削除の部分を「トル」と赤字を入れるのであるが、削り取るたびに「トレ」と悔しくて書きたいほどの思いであった。

しかし段々にその考えを方向転換した。自分の研究したことが一冊の本にまとまるということだけでもたいしたことではないか。研究に費やした時間が一冊の本という夢を叶えてくれるのであるから、この状況を受け入れていこう、という気持ちになった。

文章を削りながら、今は「トル」だが、いつかまたこれが生きるときもある。一時の状況だけにボヤクのはやめ、やめ、と歌いつつその作業を終えて、出版社の編集の方に渡し終わったところである。(生きないでそのままになることもあるが、少なくとも自分の勉強になったのは確かである)

「時間は夢を裏切らない、夢も時間を裏切ってはならない。」こんな素敵な言葉で争うのは愚かだ。槇原氏は素直に詫びた方がよいのではないかと、私は思う。しかし今更引っ込みがつかなくなったかもしれない。CHEMISTRYは評価している二人の歌手なので、これ以上泥仕合になりませんように。

銀河鉄道に乗って滅びないものを探しに出かけよう。滅びないもの、それはなんだろう。これは私が松本氏の言葉から連想して引き出した私の言葉だが、もしかしたら誰かの言葉であるかもしれない。そういうこともあるだろう。

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お疲れ様でした (tera)
2006-10-21 17:15:39
研究書の入稿おめでとうございます。せっかくの出典の引用文を削るなどというご苦労の数々、お察し申し上げます。

私も昔、夏休みの40日間すべてをかけて作ったコンピューターの教育用プログラムを、操作ミスで一瞬で消してしまったときは、3日間立ち上がれませんでした。

ご研究の成果ですが、さらなる研究の発展のためにも、どうか多くの方に生かされる日がきますことを心よりご祈念申し上げます。

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どちらも難しい・・・ (うさじい)
2006-10-21 19:01:48
ご研究の3分の1も削られると言うことは、大変なことだろうと拝察いたします。

普段私が書いている文章でも、一部を削除したために全部書き換えることがあります。それを考えただけでも、まさに骨肉を削る痛みであろうかと推察いたします。



牧原氏が頑なな態度に出られたのは、それなりの根拠があっての事だと思います。皆が皆「宇宙戦艦ヤマト」を見ていたわけではないだろうし、確かに似てはいても、それをとやかく言う松森氏のアレルギー反応が強すぎただけではないでしょうか。

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tera和尚さんへ (風月)
2006-10-23 12:02:14
慰めの言葉有り難うございます。私の苦しみよりもtera和尚さんの一瞬にして消えてしまったデータの方がなんと言って良いか、ですね。



自分の時間を使って苦労したものが、何の役にも立たなかったり、消えてしまうことはさすがに辛いことです。



ましてこれからの残り時間が少ない身にとっては尚更です。それなのにまた風邪で寝込んでしまいました。tera和尚さんもご存じの学術大会の原稿作成がまだだというのに。
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うさじいさんへ (風月)
2006-10-23 12:07:44
松本氏と牧原氏のことはどうなるか分かりませんが、松本氏のほうが大人だしロマンのある人ですから、決着が付くと思います。



文章は「を」を「は」にするだけでも全体を書き換えなくてはならないことがありますから、私も他の方へのコメントでも考えすぎて何回も書き換えることがあります。



本ができたら送ります。
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お疲れ様でございました(感謝) (よしだ)
2006-11-03 18:02:13
御原稿、書き上げられたことを知り、とても嬉しく思っております。非常に量の多い原文であり、脱稿までには、かなりのご苦労をおかけすると感じていましたが、お力のある先生ですから、きっと完遂されると信じておりました。
これまで、あまり知られていなかったであろう禅師の思想が現代の人たちに紹介されることは、たいへん意義があると存じます。仏道、真実の道を探求する人たちにとって、またひとつ、導きの書が加えられたと思います。
ご健康で、これからも多くの人たちに仏の教え・高僧のお言葉等、平易にお説き下さいますよう念願いたしております。 合掌
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吉田さんへ (風月)
2006-11-03 21:38:51
この記事にまでさかのぼってお読みいただいたとは驚きました。読まれてしまったのですね。思えば吉田さんのご依頼からスタートした研究ですが、ようやく一冊にまとめることができ、出版の運びとなりました。あらためて御礼申し上げます。

器之為ばん和尚さんとどういう縁かしらと思いますと、なにかしらあるようです。史伝の同じ頁には私が住職をしていた寺の開山さまが載っていますし、目に見えない何かがあるのでしょう。

しかし大変ではありましたが、勉強になりました。面白い偈頌もたくさんあります。多くの方に読んでいただきたいですが、ちょっとお値段が高すぎて気楽に勧められないのが残念です。

吉田さん、お元気で。本当に有り難うございました。時々コメントして下さいね。ログの内容と関係のないことでも結構ですから。
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