60歳からの眼差し

人生の最終章へ、見る物聞くもの、今何を感じるのか綴って見ようと思う。

美術展に思う

2016年05月20日 08時38分19秒 | 美術

 年賀状のやり取りをしている知人から「職美展」の招待状が届いた。この2年、年賀状に自分の絵を描いて出していたからであろう。その知人の年賀状も毎回絵が描かれている。昨年は「貴方も参加したら?」と申込書が送られてきた。しかし「今は修行の身、展覧会なぞおこがましいから、」と丁重にお断りした。そうしたら今年は招待状に、自分の作品を展示してあるから「ぜひ来てください」とのメーセージが添えられている。そこまで熱心に誘われれば義理でも行かざるをえないだろう。そう思って見に行くことにした。

 
 会場は東京都美術館である。上野駅から美術館に向かうと、傘をさして大勢の人が列をなしている。今人気の「若冲展」である。NHKスペシャルや美の巨人で紹介されて客数が増え、日を追うごとに待ち時間が長くなり、今は3時間待ちだと聞いている。今日は雨、それでも170分待ちである。熊本地震で水の配給や食事の炊き出し、ガソリンの給油で何時間も待つのは、生活が掛かっているから必死である。しかし絵を見るために雨の中を2時間50分待つという行為、待つことが苦手な私には少し異様な光景に思えてしまう。
 
 傘をさして誘導中の係員に招待状を見せ入り口を聞く。長い行列の脇をすり抜け都美術館の地下入り口で、再び展示室を聞くと1階が会場だと言われる。若冲展の人ごみから離れ階段を上がって、受付で招待状を渡し会場に入る。そこは今までの喧騒と打って変わってひっそりとしていていた。展覧会の主旨は働きながら美術を学ぶ人達の展覧会で、基本的には素人の作品である。誰もが参加でき、作品の制限も審査もなく、賞もないと言うことである。広い会場を1時間以上かけて見て回る。その間に会った人は4~5人であった。その人達も作品の前に立ち談笑していたから、たぶん出品者と招待者なのであろう。
 
 無審査だから、当然稚拙なものから立派なものまで玉石混合のように思える。しかし、どの作品も一生懸命描いているということは伝わってくる。油絵、水彩画、パステル画から彫刻まで、自分の表現方法で自分が表現したいことを、精一杯の技量と時間をかけての力作である。同じ美術館で開催される若冲の絵に比べれば、月とスッポンなのかもしれない。しかし3時間待ちで並んでいるのを見ると、「苦労して鑑賞してきました」というより、「美術展に絵を発表しています」という方が価値があるように思う。 
 
    
 
          若冲展の最後尾からは170分待ちである。
 
    
 
           公園内を蛇行した列が延々と続いている。   
 
    
 
     やっと美術館が近づいてきた。この人達は何時間待ったのだろう?
 
    
 
               美術館内の行列
 
         
 
             他にも沢山の催し物がある
 
    
 
            職美展会場にはほとんど人がいない。
 
    

 
    

 
    
 
             ムンクの「叫び」を想像してしまう。
 
    
 
              1人で複数の作品展示がある。
 
    

 
    
 
              私はどうしても風景画に注意が向く
 
    

 
    
 
 
    
 
                 彫刻もある
 
 
      「職美展」の会場の隣は「日本画院展」、そちらも見てみることにした。
 
            
   
 
    
 
        こちらは大作が多く、本格的に絵を勉強した人達の作品か?
 
       

 
    

 
    
 
    
    
 
       出口の売店は若冲関連の商品を買う人でごった返していた。
 
    
          
      帰りに見ると最後尾は150分待ち(午後4時現在)なっていた。
      他人事ながら、閉館まで何分見られるだろうと心配になる。
 
 ここからは独り言、   
 先日友人と若冲展のことを話していたら、「果たして、並んでいる人で真に日本美術に関心がある人は何人いるのだろう?、大半が物見遊山で来ているのではないだろうか?、そうであれば見る事を渇望していた人にとっては迷惑な話だ!」と言っていた。またある人は、フェルメールの「真珠の耳飾の少女」が東京に来た時、大変な思いをして見に行ったときの話をしてくれた。フェルメールの絵が展示されている部屋は超満員、何重にもなった人の後ろ頭からしか見ることしかできなかった。しかし他の部屋は良い絵が沢山あるのに、あまり人がいない。要は「あの有名な絵を見てきました」という実績が欲しいのであろう、と話していた。以前女房が、国立博物館に展示された「興福寺の阿修羅像」を友達と見に行き、「良かった良かった」と話していたことがある。しかし女房が仏像に関心を持っていたなど聞いたことが無い。
 
 先日の新聞に、若冲展は5月10日に20万人を突破したという記事があった。それだけ若冲は人気があるのであろう。しかしその中には「にわかファン」も大勢いるはずである。しかしそれらの人々を区別することは困難であり、差別することはできない。そこで私が思うのは「鑑賞したい」という行為に、価格差をつけたらどうだろうと思うのである。演奏会やライブなどは見る席、聞く席で値段が違ってくる。だから美術も時間帯で価格を変えたらどうだろうと思う。例えば何曜日と何曜日の午前中は500名の予約で入場料1万円とする。たぶんゆっくり鑑賞したいと思う人は1万円でも払うだろう。そうすれば物見遊山も減少し、落ち着いた美術展になるように思う。
 
 今の日本は豊かになり、文化芸術への関心も高くなっている。そんなことから「自分も遅れまじ!」と付和雷同型の人も多いように思う。しかし本当の芸術は自分の関心があるものに的を絞って、勉強することから始まるように思うのだが、・・・・・・・




 


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