今は昔、ある銀河の地球(ちだま)と申す星のある国に大統領の器ではない大統領がいたそうな。
海を隔てた国には首相の器ではない首相がいたそうな。
互いの国の間にはT□KU島と申す島があった。大統領の器ではない大統領がいた国の発音ではその□の部分はoで発音され文字にすれば独、首相の器ではない首相がいた国ではiで発音され漢字では竹であったそうな。
あるとき、大統領の器ではない大統領がこれという業績がない支持率浮揚のため「この島はわれわれの領土」と宣言した。首相の器ではない首相も談合ペテン政治のために落ち込んだ支持率をこれ以上、下げられないと、「この島はわが国の領土」と応酬した。互いの国のマスコミはこれぞ儲け時と「大変だ、大変だ」と騒ぎ立てナショナリズムに火をつけあおった。べつに昔ほど対立していたわけではなかった国民たちもあおられているうちに憎みあいだした。互いに自国政府を弱腰と非難していると両政府の国粋過激派が台頭し戦争やむなしの状態にまで国論が沸騰した。軍隊同士がぶつかれば国民もただではすまない。そこでこれ以上引くに引けない関係悪化を危ぶんだ両国民は国際紛争裁判所に申し立てた。国際紛争裁判所の基本方針は紛争を過去に起きた愚かな戦争にまで拡大しないことで最小の単位に治めることだった。最終的には国家から個人間の問題にまで縮小する。判決は大統領の器ではない大統領と首相の器ではない首相のT□KU島上での相撲による解決だった。一対一の対決で他の犠牲者を出さないための裁定だった。どちらかが相手を海に押し出せば勝。大統領の器ではない大統領と首相の器ではない首相は異議を申し立てたが国際紛争裁判所の裁定は覆らず、両国民の期待を背負ったふんどし姿の両首脳はしかたなく島の土俵にあがった。国民の視線を意識してできるだけゆっくり仕切り塩を撒き神に祈った。やがて軍配がかえり両者がぶつかり合うと両国民は歓声をあげて応援した。大統領の器ではない大統領は猛然と海際まで押し込んだ。首相の器ではない首相は危うくエビ反りになって耐えた。それでも大統領の器ではない大統領は子供の頃自分をいじめた子のことを思い出して全体重をかけた。その時、首相の器ではない首相は待っていたとばかりにうっちゃった。しかし、互いの体は好きでもない相手と裸で抱き合っていたのでもつれあったまま島の崖から転落した。どちらが勝ったのかはわからなかった。両国民は万歳して互いに勝った勝ったと手を取り合って喜んだ。負けたのは両首脳で両国民は勝ったらしい。両国民は今度は選挙で大統領の器である大統領と首相の器である首相を選び、その島を互いに勝ったのだからと互いに利用した。お隣さんとして以前に増して仲良くなった。またべつの銀河では今、ある国の大統領の器ではない大統領が「この島はわれわれの領土」と宣言し、隣国の首相の器ではない首相が反論しているらしい。戦争に発展するのか、それとも…。
fumio
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