“半世紀”

昨日の冷たい雨がやみ

と、すれば今日は強い風が吹くと

この時期の天候は決まってる。

しかし今日の風は、それにしても強烈だった。

どこから吹き上げてきたのか

かなり大きなビニールが宙を舞う。

電線には買い物袋がひっかかってパタパタと音をたてていた。

昨日までの乾燥注意報もやっと一段楽したと思ったら、またこれから

数日続くであろうこの風の影響で、再び乾燥の毎日になることは

間違いないだろう。

そうなると私にとっては毎日が憂鬱となる。

「乾燥肌」なのであろうか。

全身、いたる所がかゆくなるのだ。

腕、背中、足は言うまでもなく、顔は鼻の周りや首筋に至るまで常にかゆい。

皮膚科で頂くかゆみ止めの飲み薬を飲めば治まるのだが、今度は眠気との

戦いとなってしまい、夜勤のある私にとっては最悪の状態となってしまう。

保湿成分が配合されている塗り薬をつかえば全身ヌルヌルになってしまい

気分的にはやはり不快で、結局のところ我慢するしかないのだ。

早く湿度がほしい。

梅雨ほどの湿度はなくとも、私が普通に暮らせる程度の湿度がほしい。

今も背中にかゆみを感じているが、最近復活した五十肩が痛くって

背中にまで手が回らない。

そうそう、この五十肩、

四十肩も経験してはいるが

その時は何となくどんよりとした痛みで

ここからここまでが何となく痛い

という感じなのに対し、

今度の五十肩と思われるこの痛みはピンポイントで痛い。

ここが痛いと指でさせるのである。

しかし症状的には同じようなもので、腕が自由に使えないのだ。

人間も歳を重ねるにしたがって、枯れていく事は仕方ないことだが

やはり四十よりは五十、五十よりも六十になったら

もっと凄いことになってしまうのかと、少々恐怖感を抱かなければいられない

毎日である。

枯れるという表現、それはもしかしたら今の私にはぴったりの言葉で

先に述べた乾燥肌の事に関してもそうなのだが、保湿と言う機能が

全く衰えてきた感がする。

水分を摂取するとからだの中に保留する事ができないのだろう。

恥ずかしい話だが、最近テレビでよく宣伝しているように排尿の欲求を

頻繁に感じるのだ。

呑みすぎた夜などは、寝ている暇がないほど頻繁に・・・。

それどころか、利尿効果のあるお茶類なども、時にはその作用を最大に発揮し

私のからだの中の水分がなくなってしまうのではないかと危惧するほどの

量が排泄されてしまう。

全く 、歳はとりたくないものだ。

年齢を感じるのはその事だけではなく

たとえば、何時に床に就こうが

目覚める時間は決まって

太陽が昇る時間。

かといって、そのまま一日を

その睡眠時間ですごせる事もなく

昔、縁側で膝の上に猫を抱きながら居眠りをしている老人がごとく、

数十分間、眠りのそこに落ちってしまう私なのである。

そもそも、この年齢。

江戸時代であれば、既に“長老”と呼ばれても不思議ではない年齢である。

医学や食生活、環境が著しく進歩したおかげでいまだに青年（？？？）を

気取っていられるが、実際には半世紀もの時間生きているのだ。

それ相応のガタが来てもおかしくはない。

目には見えないが、確実に年輪は刻まれているのである。

その事を一番感じるのが、日常の習慣とされている走る事。

こればっかりは隠し切れない。

数日休むだけで信じられないほど衰えてしまう。

たった５ｋｍ、心肺を使うほどの走りでもないくせにやけに疲れる。

しかもその疲れが後に残るのだ。

これ程までにからだにダメージを残す年齢になったかと思うと悲しくなるが

そう思う事はまだ救いようがあり、もし私が何のスポーツもせず

からだを動かしてもいなかったなら、自分の体力の衰えさえ実感せづに

いただろう。

そして気づいた時には既に何もできない状態に陥っていただろうと。

それこそ生き地獄の門前にたたずむ一老人となる可能性もあったのだ。

からだが動く事が全ての幸せにつながる道とも思わないが、せめて動くからだが

あればこそ、楽しめる老後もあるというものだ。

それにしてもすでに老後の心配までしまう自分。

それこそが一番危ない自分でもある。

実に情けないが、それも現実を見つめれば仕方ない事かもしれない。

それでもまだまだ、これからこれから。

これからである。

半世紀、たった半世紀である。

私の歴史はまだ始まったばかりだ。

そう思う、強風の夜だった。