「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

どん底の体験が 逆転のきっかけになる

2010年04月22日 21時28分32秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 人生最大のピンチが、

 回復における 逆転のきっかけになることが しばしば見られます。

 どん底まで落ちて 開き直ったときに、

 その人の中に 本来備わっていた力が、 本領を発揮するのです。

 自分を縛っていた鎖は、 思い込みが 作り上げていたものです。

 瀬戸際まで 追い詰められたとき、

 生きたいという願望が 思い込みを打ち破るのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子は 僕と付き合うようになって 数ヶ月し、

 だんだん症状が 悪化してきたようにも見えました。

 父親との死の約束や 近親相姦などのことを披瀝し、 解離を起こしたり、

 子供の人格に戻ったり、 激しい発作を 起こすようになったのです。

 それまで意識下に抑圧していた どろどろした部分まで、

 僕を信頼して 見せられるようになり (無意識に)、

 著しい心理的症状となって 現れてきたのです。

 (ただし 父親との間の出来事は、 心子の心的事実であって、

 客観的事実ではなかったことが 没後になって分かりました。)

 それは心子が 自分の心の内面と 向き合う作業の、

 始まりだったと言えるのでしょう。

 その時期を経て、 心子は 分裂した自分を統合するような 前兆を見せ始めました。

 真っ黒でも真っ白でもなく、

 一面の黒いオセロの中の、 一点の白に 目を向けられるようになったのです。

 けれども その直後、 ある人の言葉が引き金となって、

 心子はホテルの最上階から 宙に舞ってしまったのでした。
 
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