「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

過去と現在を 結びつける

2010年04月14日 22時52分31秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 自分の 悪い反応のパターンは、 過去の自分が 身に受けたことに 一因があり、

 しかも それが、 今も親に抱いている 屈折した思いと 関係があることが、

 だんだん分かってきます。

 こうして、 いま起きている問題を、

 過去に体験したことに つなぎ直し、 再統合する段階を迎えます。

 断片が 次第につなぎ合わさり、 自分の物語ができていきます。

 マイナスの体験を 表現し尽くすと、

 プラスの体験も 語られるようになってくるのです。

 否定されていた過去は、 現在につながる歴史として 受け入れられるようになります。

 自分の人生に 新たな意味を見つけ、

 転落と絶望の物語は、 危難と再生の物語に 変貌していくのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子は出産時、 足に障害があり、

 親は 心子を抱かないようにと 医者から指示されました。

 心子の愛情飢餓の 根本的な原因は、 ここにあるのではないかと考えられます。

 最もスキンシップが 不可欠な幼児期に、 それを全く与えられなかった。

 自分が無条件に愛され、 大切にされる存在なのだということを、

 体で知ることができなかった。

 それは心子にとって、 致命的な愛情の欠乏と なったに違いありません。

 愛情の存在を 信じることができず、

 この世に生きていていいんだという 肯定感を、 無意識に育めなかったきでしょう。

 しかし 心子の母親は、 このことを何よりも 悔いているといいます。

 親のほうも、 愛したかったのに 愛せなかった。

 どれだけ我が子を抱き、 慈しむことをしたかったか。

 苦しいのは 心子だけではなかった。

 そういう物語が 紡がれてくると、 彼女の底知れない傷も、

 癒されていくことができたかもしれません。
 
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