(前の記事からの続き)
作業をマインドフルネスに行なうことの 例を見てみましょう。
M子さんは N美さんに嫌われるのを恐れて、 N美さんの言う通りにしていました。
でもN美さんに 押しつけられるということが嫌でした。
M子さんはN美さんと ドレスを買いに行きました。
店に行く途中、 自分のしていることに マインドフルであるよう心がけました。
自分の手や足の感じ, 呼吸, 見ているものも意識しました。
N美さんへの価値判断も 手放すことにベストを尽くしました。
手放すのが難しいものもありました。
ショッピングモールに着くと、 好きな店とそうでない店があります。
M子さんは徹底的受容を使い、 好きな店の 肯定的な価値判断も手放しました。
気に入っている店には 探しているドレスはなく、 徹底的受容のお陰で、
中立性と価値判断的でない姿勢が、 健康的な形で状況に対処できました。
二人は高級な店で、 高額なドレスを 気に入ってしまいました。
N美さんは 「値段は気にしないで」 と言いました。
M子さんの感情的な心は そのドレスに奪われてしまいましたが、
理性的な心は ドレスが高すぎることを 思い出させてくれました。
M子さんは ゆっくりと数回深呼吸し、 賢明な心の中心に手を置きました。
そのドレスを買うのが 良くない考えだと分かり、 店を出ました。
M子さんは正しい意思決定をして 誇りを感じましたが、
N美さんはM子さんを 「せこすぎる」 とからかいました。
M子さんは N美さんへの価値判断で一杯になり、 それを手放そうとしましたが、
N美さんに笑われ続けました。
N美さんに叫びたくなりましたが、 喧嘩になるのは分かっており、
有効なことを行なうように考えました。
それは喧嘩を起こさずに、 できるだけ早く家に帰ることだと 分かりました。
M子さんは黙って N美さんの批判を聞いていました。
家に帰って 怒りが治まると、 N美さんに電話して 話し合う勇気も出てきました。
「私は、 あなたにからかわれて傷ついた」 と、
マインドフルな 「私」 を主語にした 発言を用いることができました。
N美さんは理解して謝りました。
M子さんは、 より健康的な形で 対処した自分を 誇りに思いました。
〔「弁証法的行動療法 実践トレーニングブック」星和書店
(マシュー・マッケイ,ジェフリー・C・ウッド,ジェフリー・ブラントリー)
訳/遊佐安一郎,荒井まゆみ〕より
[星和書店の許可のうえ掲載]