ネタは降る星の如く

とりとめもなく、2匹の愛猫(黒・勘九郎と黒白・七之助)やレシピなど日々の暮らしのあれこれを呟くブログ

タミフルを巡って

2007-03-26 12:50:44 | 時事
 同じ日経のサイトで、タミフルを巡る記事がふたつ出た。ひとつはタミフルを販売している中外製薬の永山社長へのインタビュー、もうひとつは立花御大の記事。

「タミフル、販売やめない」
批判浴びても強気を崩さぬ中外製薬社長

 今年2月、愛知県と仙台市でインフルエンザ治療薬「タミフル」を服用した中学生がマンションから転落死した。事件の後、厚生労働省と販売元である中外製薬が厳しい批判にさらされている。タミフルの服用について警告を出したものの、転落死を招いた異常行動とタミフルの因果関係は認めていないからだ。

 因果関係について調べている厚労省の調査班のメンバーが中外から寄付金を受け取っていたことが問題視されるなど、両者に対する非難は強まるばかりだ。

(中略)

 薬害問題に詳しい東洋大学社会学部社会福祉学科の片平洌彦(きよひこ)教授は、「薬害エイズなど過去の大型薬害は、いずれも国や企業が因果関係を不明としている間に被害が拡大した。疑わしきは罰す姿勢で安全性が確保できるまでは使用を中止すべきだ」と主張する。だが、永山社長にその考えは全くない。

 タミフルで治療すべき患者さんがいますし、それで助かっている人がはるかに多い。ほかの重い病気の薬でも使用した直後に患者が亡くなることは残念ながらあります。だからといって、それでその薬の使用をやめてしまうということはない。タミフルは非常に大事な薬です。様々な新型インフルエンザのことを考えると、きちんと育てていかなければならない。タミフルがないと大変なパニックになる恐れがありますから。

 永山社長は2001年にスイス大手製薬会社ロシュの傘下入りを決め、製薬業界に衝撃を与えた。傘下入り後の4年間に経常利益を2倍に増やし、辣腕経営者として業界では一目置かれている。2006年12月期の連結決算は減収減益となったが、ロシュ製の抗ガン剤など複数の新薬の発売を控えており、当面の業績は安泰と言える。

 しかし、2件の転落死事件をきっかけにして、タミフルの安全性についての疑念が膨らむとともに、人の生命に深くかかわる製薬企業としての中外に対する信頼も大きく揺らいだ。タミフルの販売を継続しながら、いかに信頼を回復していくのか。今後の対応が、試される。


 自分は医学薬学のバックグラウンドがないので、ビジネス的な観点でこのインタビューを読んだ。

 確かに、医学的に因果関係は立証されていない。その段階で、どのように自分の会社の製品やビジネスを守るか。これはビジネススクールの教材にもできるぐらい典型的な、ビジネスポリシーのケースだ。

 そして、医薬品の場合は、開発段階で臨床試験を経ることによって安全性と有効性を確認した上で製造販売が承認されるのだが、限られた臨床試験では予測できない副作用が販売後に出ることがある。だから、副作用事例を収集し、必要な場合には投与に注意するように医師に周知する市販後調査活動が義務付けられている。

 今回の異常行動についてはまだ公式には因果関係が確認されてはいない。しかし、10代の青少年が異常行動によって死亡するというショッキングな事例も含まれており、死亡例が出ているという点で対応に緊急を要するケースだ。

 一方、立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」。
タミフルに隠された真実 第二の薬害エイズに発展か
タミフル服用による異常行動死問題で、厚生労働省の対応が急展開した。

タミフルによる異常行動死の問題は、2年前の05年11月から学会では報告されていた。その頃から、一部の医療関係者からその因果関係を強く疑う意見が公にされていたのに、厚労省はその因果関係をずっと否定しつづけてきた。

(中略)

タミフル服用による異常行動死問題で、厚生労働省の対応が急展開した。

タミフルによる異常行動死の問題は、2年前の05年11月から学会では報告されていた。その頃から、一部の医療関係者からその因果関係を強く疑う意見が公にされていたのに、厚労省はその因果関係をずっと否定しつづけてきた。

一般の報道を追っていただけの人は知らなかったろうが、厚労省のこのような方針大転換の背景には、インターネットの大きな働きがあった。

(中略)

これはタミフル脳症被害者の会が主張するように、明らかに薬害問題である。

厚労省は、早く予防的アクションを起こさないと、エイズ問題と血液製剤の問題のときのように、問題がもっと大きくなってから、その責任を大々的に問われることになるだろう。

おそらくなぜタミフルに異常に早い認可を与えたのか、認可するにあたって十分な審査をしたのかという根本問題にまでさかのぼっての責任が問われることになる。

なにしろ、医療ビジランスセンターのページを見ればすぐわかるように、この問題に関しては、2年も前から、繰り返し繰り返し、警告・要望が出されているのだ。

これまでの薬害問題で、厚生省が繰り返し使った逃げ口上、「知りませんでした」は全く通用しないのである。


 立花御大の記事は、販売する会社よりも厚生省の対応に疑問を呈している。

 こうした事例を見るにつけ、ビジネススクールの教材としてもよく取り上げられる、市販薬「タイレノール」を巡るジョンソン&ジョンソンの対応は見事だったと思う。「タイレノール事件」(リンク先はタイレノール製品サイトの「タイレノール事件」のページ)では、何者かによる毒物混入という犯罪に接して、ジョンソン&ジョンソンの経営陣は製品をすべて回収し、異物混入を防ぐためのパッケージに切り替えたのだ。ビジネス的にいえば一時的な費用負担は相当なものだったが、この経営陣の姿勢(その決定を支えたのは同社の経営理念を表す「クレド(我が信条)」だったという)は高く評価され、結果的にタイレノールという製品もジョンソン&ジョンソン社もイメージを上げることができた。

 果たして、中外は今後この強気の姿勢で事態を押し切れるだろうか。

キヤノン、非正規雇用者1,000人を正社員に

2007-03-26 08:00:00 | 時事
キヤノン、非正規雇用者から千人を正社員に登用
 キヤノンは、グループ各社の工場で働く非正規雇用の労働者のうち1000人を08年末までに正社員に登用する方針を明らかにした。正社員化は段階的に行い、まず派遣社員を期間工として雇用し、この中から試験に合格した人を正社員として採用する。この方針は、27日に各工場の責任者を集めて説明する。

 キヤノンは昨夏、実態は派遣なのに形式的に請負を装う違法な「偽装請負」が表面化。これをきっかけに派遣や請負の労働者から数百人を正社員にする方針を明らかにした。

 ところが、今年2月、人事本部長が朝日新聞の取材にこれを先送りする意向を表明。今国会ではキヤノンの偽装請負に批判が集中した。今回の方針表明は、そうした批判に配慮した格好だ。


 「偽装請負」について「法律が悪い」とうそぶいていた会長をいただき、さらに当初発表した正社員化を先送りしたもんだから、すっかり世間の風当たりが悪くなったのでしたね。今頃軌道修正するぐらいなら、先送りしなきゃよかったのに……。

キヤノン、派遣・請負3500人を直接雇用へ
 キヤノンは2008年末までに、グループ19社の製造部門で働く派遣労働者や請負労働者のうち16%にあたる3500人を直接雇用に切り替える。グループの製造部門の正規社員の比率が2割強と少なくなり、技能伝承などが難しくなると判断。直接雇用へ切り替えても人件費の大幅な負担増にはならないとみて採用を進めていく。

 キヤノングループの製造部門のうち派遣・請負労働者は約2万1400人。このうち1000人を中途採用の正社員、2500人を期間従業員として採用する。


 見出しの人数が違うと思ったら、正社員化するのが1,000人、期間従業員として採用するのが2,500人で合わせて3,500人ってことですね。期間従業員って、結局は時限付雇用で、期間満了したら雇い止め(契約終了)ってことではないんでしょうかね(汗)。全員が対象というわけではなさそうなので、どうやって対象者を決めるのか、気になるところです。