一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

今日の最高裁判決2つ

2009-01-22 | 法律・裁判・弁護士

toshiさんのところで取り上げられていた今日の最高裁第一小法廷判決二つ。珍しくニュースでも取り上げられていたので判決文を読んでみました(最近は即日開示されるんですね。)。

ひとつは 不当利得返還等請求事件

継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が,利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により発生した過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含む場合には,上記取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効は,特段の事情がない限り,上記取引が終了した時から進行する  

もうひとつは 預金取引記録開示請求事件

1 金融機関は,預金契約に基づき,預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負う
2 預金者の共同相続人の一人は,他の共同相続人全員の同意がなくても,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき,被相続人名義の預金口座の取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる

私は銀行や消費者金融の実務に疎いので、判決の持つ意味合いなどはtoshiさんのブログをご覧ください。
ただ、素人の僕から見ると、判決内容自体はあんまり違和感がないので、toshiさんのタイトルにされた「重み」がいまひとつ理解できませんでした(汗)


消滅時効の方は、過払いを次の借り入れの返済に充当するって約束なんだから次の借り入れがあるうちに過払い返還請求権を行使しろったって無理だろ、という「ヴェニスの商人」のような判決だと思いました。
取引条件に内在するロジック自体が、あんたの主張を封じてるだろ、という奴ですね。


取引履歴開示請求の方ももっともな話で、相続人(子)のひとりだけに被相続人(親)の取引履歴を開示することがプライバシー侵害になるとは到底思えません。
特に本件は父親の死亡前後の取引履歴の照会ということで、他の相続人の「横取り」をチェックしたいという動機なのではないかと想像したのですが、これが認められないとすると、逆に死亡間際のドサクサに預金を引き出してしまえばその後の検証もされない、というのでは「やった者勝ち」が横行してしまうのではないかと思います。

また、そもそも被相続人(=死者)の財産の取引履歴(引き出した上での使途ではない)は「プライバシー」として保護されるに値するんでしょうか。
「死者への守秘義務」っていうのも妙な話に思えます。
ちょっとでも心配がある企業からはとっとと資金を引き上げ、結局資金繰りに生き詰まらせて倒産させてしまうというようなことをやっている銀行が堂々と主張しているあたりが趣深いです。銀行はいつから牧師さんになったのでしょうか。

契約上の地位は相続人に承継されるわけですし、消費寄託の理屈はよくわからないのですが、相続財産に含まれるとすれば準共有というのは違和感がありません。


この判決で世の中が悪いほうに進むとは思えないんですが。実務が混乱するとしたら、その今までの実務の方がおかしかったのではないかと思います。
(まあ、他人事だから涼しい顔して言えるわけですが・・・)
 

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『「病」になる言葉』

2009-01-22 | 乱読日記

こちらは風邪で寝込んでいるときに読むような本でもないのですが、年末目に付いた本を適当に買いまくったのでとりあえず上に積んであるものから読んでます。


消化器内科の内視鏡専門医である著者は「胃が痛い」「腹が痛い」という患者の中で診察をしてもはっきりした病気でない患者が多いことから心療内科の勉強を始め、そこで得た考え「心と身体と言葉には深い関係がある」-言葉は毒にもクスリにもなる-をまとめた本です。

(脳の)深い部分で自分を定義しているその言葉を、より肯定的なものに置き換えることで、自分の人生を「肯定」することができる。自分の生き方を「これでいい」と感じることができる。それが私たちの心身を健康に保ち、幸福感を高めます。免疫力を高めて病気にも強くなりうる。

一つ間違うと、ここ数年流行のにわか心理分析本とかヒーリング本と同じになってしまいそうなのですが、筆者の大仰でない筆致と暖かい視線が「まともな本」の世界に踏みとどまらせています。

なるほど、と思ったのが

自分の「人生のリスク・ヘッジ」を考えるとき、必ず「セーフティ・ネット」としての話し相手を数名確保しておくこと。

これは自分の経験からいっても大事だと思います。

ここ数年、昔の友人との同窓会だとか新年会だとかが増えているのは、歳をとった同士の防衛本能が働いているのかもしれません。


僕のようなすれっからしが読むと読み流してしまう部分も多いのですが、若い人とかちょっと気持ちが落ち込んでいる人に読んでもらうといいかもしれません。





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『陰日向に咲く』

2009-01-22 | よしなしごと
いわずと知れたベストセラーです。
風邪で横になりながら読みました。

僕は「劇団ひとり」という芸人自体は知っているのですが、たまに見るテレビで見かけるのがバラエティーやクイズ番組の出演者としてなので、どんなネタがあるのか実は知りません。
(そもそもあまりテレビを見ないので、最近の若手芸人についてはほとんどそうです。それでも「劇団ひとり」の顔と名前が一致するというのは、よほど売れているのでしょう。こんどYou Tubeかなにかで見てみます。)


それはともかく、この本非常に面白いです。
面白い、という以上によく出来ています。

それぞれが微妙にすれ違う年齢も職業も違う五人が一人称で語る五つの短編から成っているのですが、それぞれの主役の語り口やいかにもやりそうなことの描写が非常に巧みで、そしてそれぞれの短編の最後にどんでん返しが用意されている仕掛けも巧妙です。

言ってみればよく出来たコントの台本ともいえます。

ただコントでは笑わせるのが仕事ですが、小説では泣かせてもいいところが違います。
そして劇団ひとりは、そのフィールドが広がった部分で、思いっきり羽を伸ばしています。


これは売れるわけだと思いました。



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