一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

菅総理の要請は実は中部電力には救いの手になったのではないか?

2011-05-10 | 原発事故・節電・原発問題

(昨晩のエントリを改題・訂正しました)

中部電力の浜岡原発停止の決定ですが、止めた後どうするのか、を考えてみました。

中部電力の電源別発電電力量はこちら

これをみると、原発(中部電力は浜岡だけ)への依存度は関電や東電より低いことがわかります。
また、水力の割合が多いのも特徴です。

では、もし浜岡原発の停止が長期化したり、廃炉になった場合、代替の発電所をどうするかですが、中部電力の管内は海に面しているのは静岡・愛知・三重県しかないため、火力発電所はほとんどが伊勢湾に面しています。(参照

伊勢湾周辺は企業の工場が集中しているため、新たな火力発電所の建設適地を探すのは難しそうです。

また、水力発電は管内の各水系に合計182箇所もあり(参照)、こちらはもっと新設が難しそうです。

なので、中部電力は40年以上経過し休止中の浜岡原発1,2号機を廃炉にし、代わりに6号機を新設する計画を進めていました。

浜岡原子力発電所リプレース計画等について ~1,2号機の運転終了および6号機の建設等について~(2008年12月22日)


ところが、今回の震災で原発の安全神話が崩壊したため、現在点検中の3号機の運転再開のめども立たない中で、6号機の建設は相当ハードルの高いものになってしまいました。
つまり、中部電力としては、将来的な電源確保の計画が暗礁に乗り上げてしまったわけです。

そこに今回の菅総理の全面停止要請が来ました。

中部電力としては、中長期的な計画では3号機の再開と6号機の新設に電源を頼らざるを得ない中で、手詰まりの現状を打開するにはここで政府の要請に従った上で、「安全性が確保できたら再開する」という言質を取り付けることで、3号機の再稼動と6号機の建設の道筋を作ろう、と考えたのではないでしょうか。
どのみち現状では防波堤ができるまで3号機は再稼動できないので、ここ2~3年4,5号機を止めることで将来のお墨付きをもらえれば帳尻は合うように思います。
しかも休止中に政府の支援があればよりマイナスは減ります。

もっとも、この判断には、将来(一定の)安全が確保できたと政府が再開にお墨付きを出してくれるか(その度量があるのか)、防波堤ができる3年後まで今の政権が持つのか(こっちのリスクの方が大きい?)、などの不確定要素があります。
また、国との交渉では、どこまでの言質を得るかがポイントになる一方で、それが「密約」などと言われないように情報公開も必要でしょうから、あからさまな拡大再開路線も言いにくいところです。

中部電力にとっては、今回の要請は「渡りに船」とは行かないものの「災い転じて福となす」程度の効果はあったように思います。


ただ、ここで巨費をかけて防波堤を建設し6号機を新設するという現状の計画だけでなく、その費用を他の電源の開発(素人なのでよくわかりませんが、自然エネルギーとか既存の水力発電や火力発電の効率化など)に振り向けるというような他の選択肢もこの機会に検討してみるべきではないかと思います。
原発休止後の燃料冷却中のリスクはあるでしょうが、どのみち防波堤建設には2,3年かかる間には低温で安定するのでしょうから、休止してすぐに再開前提で防波堤建設に取り掛かるよりは、これをきっかけに事業計画を高い視点から見直してみても時間の無駄にはならないと思います。
結果的には浜岡6号機新設が最適という結論になるかも知れませんが、今回の福島第二原発の事故で原発の潜在的リスク(コスト)が想定以上に大きいことを踏まえたうえでのきちんとした議論であれば説得力を持つと思います。
(その意味では僕は原発推進派でも反原発派でもなく、どこか現実的な落ち着きどころが必要だけという「半原発」のスタンスです)

そのへんを検討していくと、ひょっとすると「中部電力」という地域会社であることの限界がはっきりするかもしれませんし。


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