一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『新しい刑務所のかたち』

2012-10-12 | 乱読日記
本書は刑務所の実情や課題、PFI刑務所を通して見える表題どおりの「新しい刑務所のかたち」について示唆を得られることはもちろんですが、前半部はPFI制度のわかりやすい解説本としても非常に役に立ちます。

著者は日本で民間の資金や業務委託を利用したPFI刑務所を実現させ、その後も普及・改善に努力している法務省の官僚。

本省での予算管理とともに刑務所長としての現場の経験もあり、刑務所関係の予算の逼迫と現場の実情・課題をともに認識している著者が、海外の事例に学び、予定地の住民や自治体と意見交換し、民間事業者との関係を模索し、関係法令の整合性をとりながらPFI刑務所の実現に向けて進んでいく様子が生き生きと描かれています。


前半はPFI制度の導入に至る経緯について触れられていて、その中でPFI制度についても
わかりやすく説明されています。

事務委託の範囲と法規制の問題とか
事務委託者との間のリスク負担や費用支払いにおけるインセンティブのあり方とか
SPCとプロジェクト・ファイナンス、融資団の「ステップ・イン」による運営会社の倒産の場合の事業継続のしくみとか
構造改革特区法による事業と公共サービス改革法による事業との違いとか
他のPFIにおいてもポイントになりそうなことが、刑務所という具体例をもとに解説されているので参考になります。

その意味では、刑務所改革に関心がない方でも、読んで損はないと思います。


もっともそういう読み方は本書にとっては邪道で、本来は著者のPFI刑務所実現への情熱と努力の軌跡を味わうのが本筋です。

とかく官僚は批判されがちですが、本人のモチベーションと役所の課題などがツボにはまると力を発揮するいい例だと思います。
(一方で本書でも、途中でいきあたった官僚の壁についてやんわりと触れているところもありますが)




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