一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『二流小説家』

2012-10-15 | 乱読日記

久しぶりのハヤカワポケミス。
帯の「史上初、三冠達成!:このミステリーがすごい(2012年版 海外編)週刊文春ミステリーベスト10(2011年 海外部門)ミステリが読みたい!(2012年版 海外編)」につられて購入。
個人的には好みなのですが、帯にあるほど万人受けするとはちょっと意外でした。

あらすじをハヤカワ書房のサイトから

ハリーは冴えない中年作家。シリーズ物のミステリ、SF、ヴァンパイア小説の執筆で何とか食いつないできたが、ガールフレンドには愛想を尽かされ、家庭教師をしている女子高生からも小馬鹿にされる始末。だがそんなハリーに大逆転のチャンスが。かつてニューヨークを震撼させた連続殺人鬼より告白本の執筆を依頼されたのだ。ベストセラー作家になり周囲を見返すために、殺人鬼が服役中の刑務所に面会に向かうのだが……。

冴えない主人公が振り回されながらも事件を解決しようとする、というのもひとつの定石ですが、本書の魅力は作者の経験を色濃く反映したマイナーなSF小説やヴァンパイア小説、はたまたポルノ小説に関わる作家や読者たちがさまざまな局面で登場してきたり、作者の思い入れが主人公の口を借りていろんなところに顔を出すところにもあります。

特に「良識派市民」は眉をひそめる「健全でない人々」が沢山登場するところが個人的には好きです。
帯の「ランキング」が本当だとすると、日本の読者も許容度が上がったのかもしれません。

その反面、普通の登場人物の造形がちょっと月並みの観はありますし、純粋な「謎解き」としては完成度は高くないのですが、勢いと饒舌で最後まで一気に読ませる本です。


余計なお世話ですが、作者次回作をどうするかがちょっと心配。
同じ主人公でシリーズ化をもくろむのか(違いをどこまで出せるか?)、違う作品にするのか(その引出しはあるのか?)が本作で「アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞候補」にもなった著者の真価が問われることになりそうです。

コメント
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