佐藤優が「今回は、思い切って語り下しで、わかりやすい本を作ることにした」新書。
新・帝国主義の時代と不安定要因としての中国とイランなどを抱える国際政治、資本主義とグローバリゼーション、国家と民主主義とポピュリズムなどについての見方と、その背景にある思想、そしてそれを支える知性の必要性を説きます。
ただ、わかりやすい語り口にしたために、各論の切り口やエピソードが豊富でかつ面白いので、最後の骨太の結論のところだけちょっと説教くさく思って敬遠する読者もいるかもしれません。
品性の堕落とは、実は知性の堕落なのです。人間を合理的なことだけで捉えられると思っていると、だんだんそういう実利的、刹那的快楽の方向に行ってしまうのです。
外向においても、合理主義の罠にとらえられると、前に述べたように、イランのような非合理な原理で動いている国の内在的論理がわからなくなり動静が見極められなくなってしまう。
吉田茂にしても岸信介にしても、戦後の保守政治家には、そういう理屈を超えるものに気づく要素があったと思います。合理的なことだけでは国家を説明できない。国家は人間によって作られているものなのだけれども、個々の人間の意図を超えて動き出すことがある。その意味では国家は偶像と言うか、ユダヤ教神話のゴーレム(自分で動く泥人形)みたいな感じです。だから目に見えないもの、実念論が大事になってくる。
その国家がいま危機的な状況にあるとすると、そこからいかに回復していくかという問題を見据え、語ることによって何らかの糸口を見つける仕事を果たす義務が知識人にはあります。
でも、こういう説教くさいところが、佐藤優の魅力なんですけどね。