一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

「復」と「興」の選択

2011-04-11 | 東日本大震災

運転中のラジオで「首相が港湾整備に優先順位をつけると発言」と聞いておっと思ったのですが、記事を見ると石巻を視察した後の単なるリップサービスのような感じもします。

漁港復興、石巻を最優先=菅首相

漁業関係者から、漁港の再生に向けた国の支援を求められた首相は「いくつかの所(漁港)を重点的に整備していく必要がある。石巻が最優先であることはよく分かった」と述べ、石巻漁港の整備に優先的に取り組むことを約束した。

復興には予算の制約だけでなく、港湾整備にあたる重機や人手とそれらの陸路の確保などさまざまな問題があるわけで、当面は復興のしやすさ(スピード)を優先するか、拠点としての重要性を優先するかに始まり、今後様々な選択が迫られるはずです。  

そして、この時点でこういうことを言うのは気が引けるのですが、全ての漁港を津波にも耐えられる形で整備しなおすべきなのか、ということはいずれ議論になると思います。 


漁港の数は宮城県は142、岩手県は111あります。
一方で、漁港漁場整備法により、漁港は次のように分類されています。(参照

第1種漁港 - 利用範囲が地元の漁船を主とするもの。
第2種漁港 - 利用範囲が第1種より広く、第3種に属さないもの。
第3種漁港 - 利用範囲が全国的なもの。
第4種漁港 - 離島その他辺地にあって漁場の開発、または避難上、必要とされるもの。
特定第3種漁港 - 第3種のうち振興上、特に重要な漁港。

そして、宮城県と岩手県の漁港を分類すると 

宮城県  
 特定第3種:3(気仙沼、石巻、塩釜)
 第3種:2(渡波、女川)  
 第2種:21  
 第4種:1  
 第1種:115 

岩手県  
 第3種:4(山田、大槌、釜石、大船渡)
 第2種:0
 第4種:1
 第1種:106

となります。
wikipediaによる。第1種は合計値からの引き算で推計。) 

つまり、「利用範囲が地元の漁船を主とする」小規模な港が圧倒的な数存在するわけです。
(これをみると菅首相が特定3種である石巻漁港の復興に優先的にというのは国の漁業政策からも当然なことを言っただけだったのかもしれません。 )

これらの漁港全てを、少なくとも今回の大津波に耐えられるレベルまで復興させるべきなのか、というのは、もし、予算上可能だったとしても、議論すべきではないかと思います。  

ここまでの数の漁港が今まで競争で淘汰されず存在しているのは、漁民の自助努力に加え、(あくまで推測ですが)漁港として指定されれば港湾整備予算や補助金がつき、土木工事業も含めてその地域を潤してきたという部分が少なからずあったのではないでしょうか。 

しかし、今までの港湾の機能維持のための費用であれば地方財政から財源を捻出することは可能かもしれませんが、小規模な港全てを元に戻しかつ機能強化することに国の復興予算を使うのが(それぞれの港の漁民にとってではなく)三陸地方の漁業の復興とういう視点から必要なのかについて議論されるべきだと思います。

素人考えでは、いくつかの第1種漁港を第2種に統合するとか、第2種同士や第3種も統合することで、機能を強化した安全で機能的な「少数精鋭」の港を作る方が漁業の将来にとってもいいのではないかと思います。 
特に漁民の高齢化が進むことを考えると、意欲のある後継者を集約することは意味のあることではないでしょうか。  


せっかく「コンクリートから人へ」「政治主導」をマニフェストとしてうたって政権交代した民主党政権なのですから、今まで小さい港全てにまかれていた港湾整備工事予算をそのまま元に「復」すのでなく、将来を見据えた三陸地方の漁業の発展すなわち被災地域の振興のためにいかに有効に使うかという視点で判断してほしいと思います。
(住民の合意を得て途中まで建設が進んでいる八ツ場ダムを中止するよりは理解が得られると思うのですが・・・)


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