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映画 ライトスタッフ(1983) 正しき資質とは?

2023年06月29日 | 映画(ら行)
 そういえば最近投稿した超音ジェット機だが、あの映画は、まだ超えられないでいた音速の壁であるマッハ1の速度に到達しようとする航空関係の人々の人間模様を描いたストーリー。そんな作品をみて俺の頭の中にパッと閃いたのが今回紹介する映画ライトスタッフだ。
 人類史上において、初めてマッハ1の音速の壁をぶち破った飛行士はチャック・イェガーだと言われている(1947年のこと)。その後も次々とマッハ1超えの記録を目指し続けた彼の生き様。そんな彼と対比するように宇宙飛行士の7人が国家プロジェクトマーキュリー計画に携わる様子を描いているのが本作だ。
 ちなみにライトスタッフ(right stuff)とは『正しき資質』のこと。本作の場合はパイロット達における正しき資質とは何なのか?を観ている者に問いかける。

 それでは飛行士たちの勇気、プライド以上の物であるライトスタッフのストーリーを紹介しよう。
 1947年の砂漠のど真ん中におけるエドワーズ空軍基地において、チャック・イェガー(サム・シェパード)が人類史上において初めてマッハ1の壁を突破することに成功する。誰が最初に音速の壁を破るか注目していたマスコミは大騒ぎするし、次々とチャック・イェガー自身が自分の記録を塗り替えていくのに伴いマスコミの報道は過熱し、各地からパイロット達がチャック・イェガーに挑むためにやってくるのだが、その中にはガス(フレッド・ウォード)、ゴードン(デニス・クエイド)の姿もあった。
 やがてソ連が人工衛星スプートニクス1号の打ち上げに成功したとの報告がホワイトハウスに入ってくる。ソ連に先を越されたことにショックを受けたアメリカの大統領や議員、官僚たちはアメリカ高級宇宙局(NASA)を立ち上げ、各地から宇宙飛行士を募るのだった。その募集はエドワーズ空軍基地にも及ぶのだが、チャック・イェガーは大卒ではないために宇宙飛行士になる資格がなかったのだが、ガス、ゴードンは宇宙飛行士になることを目指し、他にも各分野から選ばれ、ガス、ゴードンを含め7人が宇宙飛行士として合格し、失敗続きのアメリカのロケット打ち上げテストが繰り返されるのを見て宇宙飛行士の7人は苛立ち、不満を募らせながらも人類で初めての宇宙へ飛び立つことを目指し訓練に励むのだが、しかしながらソ連のガガーリンによって有人宇宙飛行において、またもや先を越されるのだが・・・

 米ソによる宇宙開発は最初の頃はアメリカの負けっぱなし。本作においてもアメリカのロケットの打ち上げの失敗の様子が実際の映像を使って見せてくれる。ソ連に追いつけ、追い越せと宇宙開発に躍起になっている様子を見ると国威発揚映画かと思えたりするのだが、実際には7人の宇宙飛行士の命を無視しているようなNASAやマキューリー計画に関わるアメリカの偉いさんの馬鹿さに驚かさせられる。現場を全く知らない人間の考えることの浅はかさを想うと、祖国に尽くそうと命を懸ける宇宙飛行士たちが気の毒になるし、これでは不安が大きすぎて宇宙へ行こうなんて俺だったら思えない。
 そして、チャック・イェガーの方だがマッハ1を目指し、次々自己記録を更新したり新たなライバルの出現があったりでマスコミからヒーロー扱いされていたのに、マキューリー計画が始まり、動き出すとマスコミはチャック・イェガーには見向きもしないし、政府も大幅に予算をカット。世間からの注目を浴びなくなってしまう。しかし、それでも飛びづづけるチャック・イェガーが格好良い。その姿は、まるで時代に乗り遅れた西部劇のガンマンみたいであるが、己の持っている正しき資質を信じ続ける姿は最後まで格好良い。
 馬鹿な偉いさん連中に命を預けながらも、己が持つ正しき資質を信じて宇宙船に乗り込む宇宙飛行士たちも格好良い。彼らの想いには偉いさん連中の我が儘、私利私欲も入り込む余地がない。我が日本の宇宙飛行士若田光一さんって格好良いんだ、なんて本作を観直してから気づいた。
 飛行士の奥さんたちの心情を巧みに描かれているし、心が震えるような音楽が素晴らしい。音楽を担当しているのは誰かと調べたら、あのロッキーシリーズで有名なビル・コンティだったと知って納得。
 少し不満があるとすれば3時間の長時間映画であること。冒頭から泣かせたり、熱くなるような名シーンが連発するのだが、宇宙飛行士になろうと訓練するシーンがコメディ色が強くなってしまったのが、ちょっと残念。もう少しその辺をばっさりカットするか、もっと熱いシーンを目指すなりして欲しかった。まあ、それも個人的な意見に過ぎないのだが。
 そんな訳で宇宙への憧れが強い人、飛行機が好きな人、心が熱くなるような映画を観たい人、どこか不器用に生きる男たちに格好良さを感じる人に今回はライトスタッフをお勧め映画に挙げておこう

 監督はフィリップ・カウフマン。本作の他に存在の耐えられない軽さクイルズといった表現の自由をテーマにしたような作品が個人的には心に残っておりお勧めです。
 


 
 




 
 

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