デヴィッド・リーン監督の特徴といえば、アラビアのロレンスに代表されるようなスペクタクルな映像シーンを挙げることができるだろう。他の監督の作品だと見た目が派手なだけで、中身がスッカラカンで内容が乏しい映画も時々見かけるが、今回紹介する映画ライアンの娘については、そんな心配は全くの無用。不倫というモラルを問われるテーマを扱いながらも見所満載の映像と説得力のある内容が繰り広げられる。
さて、ストーリーの説明に入る前に本作の時代背景に少し説明した方が良いだろう。現在はイギリス領である北アイルランドとアイルランド共和国がアイルランド島を分裂して存在しているが、本作の時代はアイルランド島全体がイギリス領であった頃を背景にしている。アイルランド人たちは自らの祖国を取り返すためにアイルランドに駐屯していたイギリス軍と対峙していたのだが、そんなアイルランド独立戦争勃発直前というのが時代設定として本作は描かれる。
反イギリス感情が高まるアイルランドの寒村を舞台にしたストーリーの紹介を。
ダブリン(アイルランドの首都)から教師をしているチャールズ(ロバート・ミッチャム)が帰ってくるのを待ちわびていたのが、かつて彼の教え子であった若き美しい女性ロージー(サラ・マイルズ)。今では尊敬から恋愛の対象になってしまったチャールズに対して、ロージーは猛アタック。その甲斐もあり年の差を超えて二人は結婚する。しかしながら、ロージーは平凡な彼との結婚生活に退屈さを感じていた。
そこへ新しくイギリス軍基地に赴任してきたのが若き将校であるランドルフ(クリストファー・ジョーンズ)。ロージーが父親であるトーマス・ライアン(レオ・マッカーン)が営む酒場で働いている時に、客としてランドルフがやってくる。そのことを切っ掛けにロージーとランドルフは不倫への道へと突っ走り・・・
チャールズとロージーの年の差カップルだが、結婚する前後のシーンだけで、あ~この2人は上手くいかないんだな~と思わせるような場面が示唆的に描かれる。しかしながら、本作が面白くなるのはイギリス人将校のランドルフが登場してからだろう。不倫だけでも大問題なのだが、よりによってアイルランド人にとっては憎きイギリス人と恋愛感情に陥るとは。前述したイギリスとアイルランドの関係を予備知識と知っていれば、この不倫が相当思い切った行為であり、単なる不倫以上の重さを感じることができる。しかしながら、さすがはデヴィッド・リーン監督というべきなのか、不倫に陥る映像表現がめちゃくちゃ美しい。特に森林の中での官能的シーンは印象的だ。
本作のテーマは不倫だが、それ以上に観ている者に考えさせられることがある。それは妻が不倫しているのに、そのことを咎めようとしないチャールズの考え。すっかりそのことに気付いているのに、なぜ黙っているのか。見たところ夫が気が弱いとか、若妻の尻に敷かれている風でもない。チャールズから出てくる台詞に「いつか君が戻ってくると信じていたんだよ」なんて甘っちょろいことを言っている。しかし、俺にはわかる。これが男の優しさであり、本当の男ならではの器量の広さ。理由はどうであれ愛する女性に対しての接し方を、タフガイスターでならしたロバート・ミッチャムから学ぶことが出来る。
そして、ロージーの不倫相手のランドルフだがこの男を単なる悪者として描いていないのが良い。この映画の中で最も戦争の被害に遭っている人物として描かれる。彼の戦争によって負わされた傷は肉体的よりも精神的の方がダメージを大きいことが見ていてわかる。戦争の悲惨さは命を奪ってしまうことはもちろんだが、精神に与えるダメージもある。ランドルフの存在によって本作は反戦映画の意味合いもある。
そして、恐ろしいシーンが後半で待っている。アイルランド独立戦線の武装派がイギリス軍に捕らえられてしまうのだが、密告の疑いがロージーに向けられてしまう。ロージーが密告犯でないことを知っていながら、イギリス人と不義を通じているだけでリンチに掛けてしまうように集団心理の恐ろしさをまざまざと思い知らされる。支持率100パーセントを目指している人間がいるが、実はそれは危険な思想だということがよくわかる。マイノリティの考えの重要性、他人の意見にも耳を傾けることの大切さを惨い場面から教えられる。
映像的には海岸沿いの撮影が非常に印象的。まさにアイルランドってこんな風景だよな~と感じさせられるところは、この監督らしさが出ている。他にもロージーに対して厳しさと優しさの両面から説教する神父(トレヴァー・ハワード)や、しゃべることが出来なくて村の人々から馬鹿にされているマイケル(ジョン・ミルズ)の存在も惹かれる。3時間を超える映画なのでそれなりに忍耐力を必要とするが、決してダレルことはない。色々なテーマを内包し、見所満載の映画ライアンの娘をお勧めに挙げておこう
監督は前述した通りデヴィッド・リーン。アラビアのロレンス以外にもお勧め多数。本作と同じく不倫をテーマにした逢びきは見比べて観るのもあり、反戦映画の傑作戦場にかける橋、飛行機の発展を感じられる超音ジェット機、これまた不倫を描くドクトル・ジバゴがお勧め
さて、ストーリーの説明に入る前に本作の時代背景に少し説明した方が良いだろう。現在はイギリス領である北アイルランドとアイルランド共和国がアイルランド島を分裂して存在しているが、本作の時代はアイルランド島全体がイギリス領であった頃を背景にしている。アイルランド人たちは自らの祖国を取り返すためにアイルランドに駐屯していたイギリス軍と対峙していたのだが、そんなアイルランド独立戦争勃発直前というのが時代設定として本作は描かれる。
反イギリス感情が高まるアイルランドの寒村を舞台にしたストーリーの紹介を。
ダブリン(アイルランドの首都)から教師をしているチャールズ(ロバート・ミッチャム)が帰ってくるのを待ちわびていたのが、かつて彼の教え子であった若き美しい女性ロージー(サラ・マイルズ)。今では尊敬から恋愛の対象になってしまったチャールズに対して、ロージーは猛アタック。その甲斐もあり年の差を超えて二人は結婚する。しかしながら、ロージーは平凡な彼との結婚生活に退屈さを感じていた。
そこへ新しくイギリス軍基地に赴任してきたのが若き将校であるランドルフ(クリストファー・ジョーンズ)。ロージーが父親であるトーマス・ライアン(レオ・マッカーン)が営む酒場で働いている時に、客としてランドルフがやってくる。そのことを切っ掛けにロージーとランドルフは不倫への道へと突っ走り・・・
チャールズとロージーの年の差カップルだが、結婚する前後のシーンだけで、あ~この2人は上手くいかないんだな~と思わせるような場面が示唆的に描かれる。しかしながら、本作が面白くなるのはイギリス人将校のランドルフが登場してからだろう。不倫だけでも大問題なのだが、よりによってアイルランド人にとっては憎きイギリス人と恋愛感情に陥るとは。前述したイギリスとアイルランドの関係を予備知識と知っていれば、この不倫が相当思い切った行為であり、単なる不倫以上の重さを感じることができる。しかしながら、さすがはデヴィッド・リーン監督というべきなのか、不倫に陥る映像表現がめちゃくちゃ美しい。特に森林の中での官能的シーンは印象的だ。
本作のテーマは不倫だが、それ以上に観ている者に考えさせられることがある。それは妻が不倫しているのに、そのことを咎めようとしないチャールズの考え。すっかりそのことに気付いているのに、なぜ黙っているのか。見たところ夫が気が弱いとか、若妻の尻に敷かれている風でもない。チャールズから出てくる台詞に「いつか君が戻ってくると信じていたんだよ」なんて甘っちょろいことを言っている。しかし、俺にはわかる。これが男の優しさであり、本当の男ならではの器量の広さ。理由はどうであれ愛する女性に対しての接し方を、タフガイスターでならしたロバート・ミッチャムから学ぶことが出来る。
そして、ロージーの不倫相手のランドルフだがこの男を単なる悪者として描いていないのが良い。この映画の中で最も戦争の被害に遭っている人物として描かれる。彼の戦争によって負わされた傷は肉体的よりも精神的の方がダメージを大きいことが見ていてわかる。戦争の悲惨さは命を奪ってしまうことはもちろんだが、精神に与えるダメージもある。ランドルフの存在によって本作は反戦映画の意味合いもある。
そして、恐ろしいシーンが後半で待っている。アイルランド独立戦線の武装派がイギリス軍に捕らえられてしまうのだが、密告の疑いがロージーに向けられてしまう。ロージーが密告犯でないことを知っていながら、イギリス人と不義を通じているだけでリンチに掛けてしまうように集団心理の恐ろしさをまざまざと思い知らされる。支持率100パーセントを目指している人間がいるが、実はそれは危険な思想だということがよくわかる。マイノリティの考えの重要性、他人の意見にも耳を傾けることの大切さを惨い場面から教えられる。
映像的には海岸沿いの撮影が非常に印象的。まさにアイルランドってこんな風景だよな~と感じさせられるところは、この監督らしさが出ている。他にもロージーに対して厳しさと優しさの両面から説教する神父(トレヴァー・ハワード)や、しゃべることが出来なくて村の人々から馬鹿にされているマイケル(ジョン・ミルズ)の存在も惹かれる。3時間を超える映画なのでそれなりに忍耐力を必要とするが、決してダレルことはない。色々なテーマを内包し、見所満載の映画ライアンの娘をお勧めに挙げておこう
監督は前述した通りデヴィッド・リーン。アラビアのロレンス以外にもお勧め多数。本作と同じく不倫をテーマにした逢びきは見比べて観るのもあり、反戦映画の傑作戦場にかける橋、飛行機の発展を感じられる超音ジェット機、これまた不倫を描くドクトル・ジバゴがお勧め