褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 夜の大捜査線(1967) 人種差別の根の深さを感じる

2018年06月29日 | 映画(や行)
 1950年代から1960年代にかけてアメリカで吹き荒れた公民権運動。アメリカの黒人達が人種差別、人種隔離の撤廃を求めて立ち上がった運動だ。そんな公民権運動が盛り上がっていたグッドタイミングに登場したのが今回紹介するのが映画夜の大捜査線。黒人差別が根強いアメリカ南部を舞台に地元の白人警察署長と、たまたまその場を訪れた黒人刑事が、殺人事件を解決するためにお互いに嫌々ながら協力する話し。
 なかなか犯人捜しのサスペンス感が楽しい映画だが、それでも更にインパクトに残るのが白人が黒人を嫌う様子。黒人刑事を観ただけでその場を去ろうとしたり、黒人刑事がのっている車を追いかけまわし、ある倉庫に追い込んでリンチしようとする。その他にも見ていくとたくさん出てくる。
 さて北部からたまたまやって来た非常に頭が切れる黒人エリート刑事、そして地元のことしかわからず今まで殺人事件を担当したことのない警察署長。地元の警察の人間達も白人差別者。黒人エリート刑事と地元の白人署長が協力して犯人を探し出せることができるのか?

 それではストーリーを簡単に紹介しよう。
 アメリカ南部ミシシッピー州の田舎の駅に夜行列車で到着し、くつろいでいる黒人の男がいた。折しも大富豪の殺人事件が起きたその夜に巡回していた警官サム(ウォーレン・オーツ)は駅でくつろいでいた黒人を人殺しだとなぜか自信を持って逮捕。そして警察署に連れて行くのだが、なんとその黒人はフィラデルフィアの敏腕刑事ヴァージル(シドニー・ポワチエ)という殺人事件を担当する敏腕刑事。周囲の白人達から偏見を向けられながらも、圧倒的な推理力で殆ど適当に捕まえてきた容疑者たちの冤罪を即刻で示してしまう。
 殺人事件を解決するために署長であるビル(ロッド・スタイガー)はヴァージルに捜査の協力をお願いする。ところが人種差別の激しいこの土地でヴァージルといえども大苦戦。あやうく殺されてしまいそうになる始末。しかしながら、思わぬところから真犯人の手がかりを捕まえるのだが・・・

 黒人と白人の対立する映画で時々みかけるのが、白人が黒人を馬鹿にして徹底的にしごきまくるパターン。しかし、本作は黒人刑事が圧倒的推理力、行動、勇気で凄さを白人達に見せつける。人間何か一つでも他人より秀でた者があれば自分を偉く見せることができる。ちなみに今回の黒人刑事は抜群の推理力を見せつけることによって白人たちの心を少しずつ掴んでいった。
 ひたすら偏見丸出しの白人の登場人物たちがアホに見えてしまうが、なぜ白人は黒人に対する憎悪を持ち続けるのか?しかし、この映画を観れば白人と黒人の争いがなくなり、人種偏見全部がなくなる可能性を感じさせる。この映画の場合だと黒人刑事は敏腕刑事として誇りを持ち、白人署長は俺がこの地域を守るという誇り。自分に対して誇りを持ちながら相手のことを理解してやる、この相互関係がさらには世界を平和にするヒントになるだろう。真の友情を示すのに多くの言葉はいらない。黒人刑事ヴァージルと白人署長ビルが列車乗り場で別れる場面。この時ビルは何を持っていたか?そこにはビルの黒人刑事に対する尊敬の念が表れていた。静かな感動が湧いてくるラストシーンである。
 レイ・チャールズの音楽は素晴らしいし、社会問題を一級の娯楽サスペンスに仕立て上げる演出は見事。人種偏見による事件が未だに後を絶たないが、それでも人類がみんな仲良くできる日が来るのではないかと,わずかながら感じることができる映画夜の大捜査線を今回はお勧め映画として挙げておこう。


夜の大捜査線 [DVD]
シドニー・ポワチエ,ロッド・スタイガー,ウォーレン・オーツ,リー・グラント
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


 監督はノーマン・ジュイスン。サスペンスの分野で多くの傑作を残している。博打映画シンシナティ・キッド、とってもゴージャスな華麗なる賭け、老若男女とわない恋模様を描いた月の輝く夜にがお勧めです。


  
 
 



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