銀河の物語。生後3ヶ月、貰い手がつかないことから、明日には捨てられるところだった。思いがけずわが家に来たが、当時は駄犬が2匹住んでおり、怖くてみゃあみゃあ啼くばかりしていた。外に出れば、帰れない。娘の姿を見つけると、猛ダッシュで帰る。そのくせ、ご飯は私にねだる.
外をうろついて、ダニと蚤を連れ帰る。風呂に入れられ、DDTをぶっかけられて真っ白になった。銀河は、毛並みが漆黒の闇の色でつけたのに、まるで雪塗れか、小麦粉に突っ込んだよう。家族で大笑いである。きょとんしている銀河の体から、蚤がぴょんと跳ねた。慌てて新聞紙を敷いて、毛を梳いてやった。
銀河を譲り受けたのには、以前の住まいに鼠が出没したからで、毎晩の運動会は記録的。古屋が揺れる始末だった。猫の気配で途端に出なくなった。暫くして引越しを余儀なくしたが、置いて行く訳にはいかない。犬は実家に連れて行った。思案の果て、室内で飼うことにした。時折、散歩に出かけて迷子になる。
ご飯をやるのは私なのに、眠るのは娘の布団だった。こちらの話す言葉を理解しており、ちゃんと聞き分けていた銀河である。好物は、メロン、ほうれん草、味付けのり、おかき、アイスクリーム、胡瓜。えっ!と、思うような物を食べるのだ。一風変わった銀河で、地震予知能力にも優れていた。
そういった時には、恐怖のあまり天上まで駆け上がる。そうして、炬燵に潜りこんで出てこない。酷い時などは車酔いしたようになって、ぐったりしてふらふらしていた。その様子で地震の大きさや、国内か外国かがわかった。枇杷葉茶を飲むようになってからが、的中率が増していた。
今年の4月10日の誕生日に、娘夫婦からプレゼントされた、真新しい首輪に替え、二人の孫からの手紙を胸に、息子と嫁からの毛布に包まって、旅立って逝った銀河。