新月である。この月から、宇宙の星が冴え始める。依って七夕がある。銀河鉄道が走るのだ。何と壮大な鉄道か。音もなく走り来る銀河鉄道は、云わずとも伝わっている。発車する時刻も、通過する駅も、現われることを知っている。
天の川は、緩やかに滔々と流れ、カササギの群れ飛び、乙女が水浴びをする。夜半、オルフェウスの竪琴が鳴り、ゼウスは浮気に姿を隠す。明け方、こっそり川面に潜り、素知らぬ顔でオリンポスに帰り行く。ヘラは、浮気の証拠を手に、微笑む。
オリンポスの神々も、美しい娘には惑わせられる。最近は、整形手術が多くなり、実態とかけ離れていることもあるが、人間はよもや神とは疑わず、わかりもしない。世知辛い中を生き抜くよりも、この世に見切りをつけたのが、よくはないか。
夏休みも後半に差し掛かってきた。五月蝿いほどの蝉の声にあらず。冷房器具の騒がしさである。24時間、フル回転のところもあって、網戸にしていると、騒音に悩ませられる。それに加えて、近所のガキの泣き声である。閉口する親のヒステリー声。
試験が迫っているというに、集中できないではないか。子どもは泣くのが仕事だが、親は子どもを泣かすな。きちんと納得するように、愛情を注げないのか?泣くなって、言うのは間違ってるよ。親の理不尽さを、押し付けないで。
最近は、親に生れない者が多い。頭ごなしに怒っても、そりゃ逆効果だよ。泣いているのに、泣くなはいけない。とても良い声だとか、泣き方が上手だとか、一応は誉めてみましょう。お母さんも泣くよとか、お父さんはこんな泣き方だとか、言ってみよう。
大人に、親に、突然なれる訳ではない。自分にも、子ども時があった筈。泣くには、ちゃんと理由があるよ。大人の、親の勝手な都合で怒らないで。近所迷惑には違いないが、じっと我慢して聞いていると、親の方が断然間違っている。
山椒は、小粒でもピリリと辛い。実は辛いんだが、葉っぱは匂いがいいね。