そそる赤ちょうちん
弘化元年創業。道頓堀にあるめっぽう古いおでん屋。
ここ『たこ梅』の場合は関東煮(かんとだき)と呼びたい。ここのたこは、おでん鍋に入らない。
「どないしたら、あんなに柔らかくなるのや」、酔客が集まるとそんな話になったという、名物たこ甘露煮。
塩で揉んだら固くなってしまうだろう、いや大根でひっぱたく、米のとぎ汁だ、足で踏む…いろいろ言う人がある。
今から34年も前に出た、「夕食指南」(柴田書店)という本に作り方が載っている。
①700~800gのタコ(イイダコでもよい)を塩で洗い、水1.8ℓを沸騰させた中へ醤油(濃口でもよい)一割、
砂糖カップ1~1杯半を入れる。
②沸騰した①へタコを入れ、煮えたら中火か弱火にして、1~2時間煮る。冷まして辛子をつけるか、
おでんの中へさっと入れて食べる。
この本で取材されているのは、グラグラ煮立つ鍋の前でニコリともしなかった4代目、岡田正弘氏。
こう書かれても、勘どころは何にも喋っていないに等しいので、何の参考にもなりゃしない。
燗酒。 あ~、ええ按配である。
ひろうす。漢字で書くと飛竜頭。百合根やぎんなん、きくらげなどいろいろ入った豪華版。
いつもは鍋の底に並べられ、口に入るまで、4日かけるというこんにゃく。
素人にマネのできぬ仕事がなされている。そこがプロのおでんの値打ちというもんだ。
聖護院大根 4代目の頃は大根がなかった。おでんで大根がなけりゃ、天ぷらで海老が、寿司でまぐろがないに等しい。
ところが頑として大根は使わなかった。「あんなもん、おでんに入ったのは最近の話…」と先代が言うてたらしい。
ころ、平てん 昔は高い店だった。父に「たこ梅に行ってきた」というと呆れられた。1人で6千円ぐらいはスグ。
怖いおっさんと、おっさんが体調を崩してからはおばはんが立ち、その周囲をゲシュタポのような愛想のない割烹着のおばはんたちが立っていたが、時代と共に人も変わり、今や快適な店となっている。店の人間と共に客も変わった。
5代目になって、クジラのメニューが増えた。塩くじら。
この時代になってクジラの扱いが増えるあたりに、調査捕鯨のようわからんところがある。
シーシェパードの味方ぢゃないが。ファジーにしてある辺りが気持ち悪い。
カウンターの高さも椅子の高さも、数年前のリニューアル時、現代人に合わせて作りかえられている。
外観は昔のまんま。
周囲の道頓堀はスカタンな街に変わってるけど、今井などと一緒に大人の街だった道頓堀をどうか取り戻してほしい。
そうすれば日本中から客が来るはずだ。小手先の新しさなんていらない。100年を見据えた街の大改造がいるのではないか。
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