戦前、三高生など京都の学生はなにかというと寺町に繰り出し、
名代のすき焼き屋「三嶋亭」の二階座敷などで痛飲したと聞く。
それぐらい安かった。今では、うんと力瘤を込めた日でないと行けやしない。
すき焼き屋よりも、さらに敷居の低い店が裏寺町、柳通りにある。
それが「静」。 縄のれんのすき間から、にぶい灯りが洩れる。
やってるのかやってないのか解らないぐらいの奥ゆかしさ…
戦前、右隣には「正宗ホール」という安酒場があり、三高生などが根城にした。
若き日の織田作之助、青山光二、野間宏、富士正晴などもきっと行ったはずだ。
戦後になって、その店を買い足して店を拡げたという。
その残滓は店のあちこちで感じられる。
落書は戦後のものなんだろうけど、
こうも重ね書きすると、風格というか、ルオーみたいな厚みが出て来るような。
えらいのは、便所のエログロ落書きみたいなのは一つもなかった。
白墨が常備されている訳はなく、客が持参するのか、書いていいとは一切言ってないそうだ。
片隅に、誰が弾くのか古ぼけたガットギターがあった。
いろんなものが沁み込んだ壁を舐めながらでも一杯飲めそうな気がする。
誤解の無いように…掃除は行き届いている。 お母さんと娘さんでちゃんと守ってる。
あじの南蛮漬け ¥500
酒で口が甘くなった時に、なぜかこんな酸味が欲しくなる。
白菜漬け ¥420
これもちょっと酸っぱくなったのを、水に放して固く絞って出す。
こういうのがいい。
なになに…「静の出し巻きは最高や~みんなたのめ」
やかまっしゃい。
キミらの指図は受けずとも、おっさんはだし巻きたのむのである。
出し巻き ¥490
だしがよく効かせてある。 こいつをそのまま弁当箱に入れて、学校へ行きたくなる。
しみじみ美味い。
やっぱり、学生居酒屋史に残る、名物にちがいないのだ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます