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梅田芸術劇場で公演中の『おもろい女』に行った。
これはミスワカナ・玉松一郎の漫才コンビの一代記で大阪初演。
作/小野田勇、演出/三木のり平。この二人、トリローファンには最重要人物で、
共に三木鶏郎グループの主要メンバーであったが、すでに共に鬼籍におられる。
森光子というと放浪記のでんぐり返りやスクワット1日50回とか、ジャニーズ東山との熱愛が
気色悪いとか言われるが、85歳になる老婆があそこまでできるかというと、
やはり物の怪といわざるを得ない。
冒頭15歳のワカナ役はどうあがいても無理があるが、年を経るごとによくなって行った。
しかし実際のワカナは、パワー全開で喋り、歌い、タップを踏んだというから、いささかパワー不足は否めない。
Dinahを歌うシーンがあったが、もっとハツラツとした突き抜けるような明るさが見たいところ。
ワカナ一郎の芸風は、その後の蝶々雄二、ワカサひろし、洋助喜多代らに引き継がれているとおぼしい。
ぼ~っとした男とやりこめる女、大助花子などもこの系譜やな。ラジオでの漫才シーンはよく稽古がなされていた。
ラスト近く、西宮球場の実演のコンビの「出」のシーンが形・気合共に良く表現されており、
最後の実演、迫るものがあった。
稀代のはまり役だった故・芦屋雁之助の一郎に(実物にそっくりだった)比べたらそりゃ分が悪いが、
先輩段田安則さんも手馴れた大阪弁でよく頑張っていた。森光子さんの舞台を見られるのも、
そう長くはないだろうという関係者の観測。僕もそういう気がしている。
カーテンコールで「ん?大丈夫か」と思ったし。それも演技ならなお凄い。
すごいものを目にした。中入り後、楽屋から舞台袖に向かう、森光子と赤木春恵の二人が
手をつなぎ合って、よちよちと歩きながら「South of Border」をくちずさんでいた。
心を許し合った二人の老女優、なんとも心温まる風景だった。
これ見ただけでもムリして行った甲斐があったというもの。
帰りにかっぱ横丁の大衆居酒屋『丸一屋』で湯豆腐、空豆、かますごで菊正2合と麦焼酎一杯。
こういう雑然とした中がいい。
ここにさっきまで舞台に出てた役者が入ってきて、瞬間的に「お疲れさんでした」と習性で挨拶してしまう。
向こうは全く知らぬわけで…。
隣り合った常連に裏メニュー、キムチ納豆お好み焼きを一口分けてもらった。よき哉。
丸一屋 大阪市北区芝田町かっぱ横丁
でもカーテンコールの時、なかば茫然自失で焦点が合ってなかったのは、演技だったのでしょうか。この先もご無事に千秋楽までつとめられ、今後も活躍されることを祈るばかりです。