短歌結社「軽雪」は今年、創刊60周年を迎え、この度軽雪合同歌集『遠山』が刊行されました。
軽雪に入会以来10年余になりましたが浅学の身、上達はありませんが30首の歌を並べて頂き、喜寿の記念になりました。
私の詠む歌はどうしても戦死の父を偲ぶ歌が多く、この度の題も「ひとつぶの真珠」としました。
戦時中、金はお国に提供?しなくてはならず、母は父から の指輪のわずかな金を提供して真珠のみを大切に保存し、私の成人式の
に素敵に加工してくれました。
戦死の父と結ばれた、ただ一つの「ひとつぶの真珠」ですが、今日までの長い人生に多くの勇気を与えて頂き励まされて来たように思います。
「ひとつぶの真珠」30首の一部
墓石に海軍中尉の彫り深しレイテに果てし父偲ぶ文字
ひとつぶの形見の真珠に偲びをり征きて還らぬわれ知らぬ父
われ五歳白木の箱に寄り添ふも父の戦死を知るよしもなく
かの夏の薄暗き本堂に父の名の白木の箱抱く母は二十五歳
父戦死(なき)後祖父母に諭され嫁ぎたる母を恋ふ夜の頬の冷たく
軍服を脱ぐこともなく「鳥海」で通信業務を永久(とは)に励むも
「お父さ~ん」と呼べど叫べど届かぬか海底の「鳥海」浮かびて来ぬか
亡き父も眺めたるべし南十字星パラオの空にわれ今あふぐ
遺児といふ偏見背負ひて生き来しもいま掌の皴は「幸」の草書文字
喜寿となり戦争遺児ゆゑの苦かりし想ひも今やそよ風のやう
父が960名の戦友と運命を共にしました 「鳥海」 平成28年3月1日~10日 洋上慰霊に参加した全国289名の皆様と