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新潮社 |
彼の書く文章は、どことなく固い。それは、流れているというよりも、展示しているという感じだ。しかし、その展示物の色彩が、色とりどりの感情を生み出しているのも確かに感じる。この小説もそうだと感じた。この小説に登場する人たちの感情は、まるで流れている感じがしない。けど、登場人物の心の裡では、確かな鼓動のような音が聞こえる。それは、確かなリズムを持って、読者に届くのだと思う。でも、その手法による表現については、あまりにも固いが、それでも強烈な波動を発し続けるモノなので、読者によっては、好き嫌いがはっきりと表れる作家であると感じる。彼の描く表現は、まるで熱せられ、光りを放つ鉄の固まりだ。それは強烈な存在感を放ちながら、読者の心情を困惑へと陥れる。いわば読者に対する挑戦状であると感じました。