散歩の途中、家の前を掃除している高齢のじじを見かけた。
そこは中学校の同級生の家で、よく遊びに行ったものだ。
そのじじの姿を見て「ああ、お父さん、まだ健在なんだ」、と思ったのだが、しばらくして、あれっと首をかしげた。
あの時は確かお父さん40代半ばだったし、それから50年経っている…
と計算してみると、掃除をしていたのは自分と同い年の同級生だったと分かった。
ある年齢以上になると、同い年の人と見比べて、あの人より自分のほうが若いと思ったりするものだ。
しかし相手も同じように、自分のほうが若いと思っていたりする。
それを口に出すと、もめ事が起こるのも重々分かっているので、誰も口に出さない。
それで丸く収まっているのである。
老いた自分を認める。
それでも同い年の人々と比べて自分は若いとちょっとうれしくなり、ささやかなヨロコビを感じる。
黙って腹の中に収めていれば分からないのだから、それくらいいいじゃないかと思うのだった。