ここ4年ほど、意識的に歩くことにしている。といっても一日平均2時間程度、距離にすると7~8キロメートル位。自宅の前の公園の散歩道を早朝、夕方そして夕食後に。早朝と夕食後(午後9時前後)は歩いている人は殆どいない。家族づれ若者のグループでにぎわう昼間とは対照的に静かで、時折犬を散歩に連れてくる人に出会う位だ。
この公園は公園灯が整備されていて夜でも煌々と照明がともっているから身の危険を感じることはない。あるいは木立の向こうにコンビニエンス・ストアとガソリンスタンドの明かりが見えるほか、交通量の多い道路にも面しているせいかもしれない。いつでもこの散歩道には歩行者しかいないから、安心して思索にふけることが出来る。前を見ているようで、見ていないような感じだ。こうして歩いていると、不思議に気が鎮まって来て、考えがまとまることがある。あるいは、新しい観点に気が付くこともある。たとえば思いがけないメールを受領した時など、すぐに返事を出すのではなくて、歩きながら幾つかの文章を考えてみる。送ってきた人の真意が実はほかのところにあったのだと気が付くこともある。さらには、散歩道から望める山並みを眺めているうちに、最初に沸き起こった感情が的を得ていなかったのでは、と思いつくこともあるし、書き出しの文章がすらすらと出てきたりすることもある。
散歩の習慣はロンドンの家に滞在しているときも続けている。ただ、家の前には小さな公園しかないので、テニスコートの横を通ってウインブルドン・ビレッジまで1時間程度歩くことにしている。ただ、この道には交差点がいくつかあるので車に気を付けなければならない。歩くことは自分にとっては時差ぼけを解消する一番効果的な方法だと思っている。