難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

総務省の字幕放送研究会に求めるもの

2005年08月29日 23時08分56秒 | 生活
今日の日経新聞に、総務省が字幕放送研究会の立ち上げることが載っていた。8月の朝日新聞に次いで、2紙目だ。
総務省、字幕放送普及へ今秋にも研究会発足 総務省は聴覚障害者向けの字幕放送の普及策を検討するため、秋にも有識者やテレビ局など関係者でつくる研究会を発足させる。同省は2007年までに、技術的に字幕を放送できる全番組での放送実現を目標に掲げている。 日本経済新聞 

字幕放送は、このところ台風情報も選挙特番や24時間テレビなど民放のバラエティ番組にも生放送の対応が増えているように見える。
記事に気になる点が二つある。一つは「技術的に字幕を放送できる全番組」という「技術的」という言葉だ。1997年に総務省(当時郵政省)が字幕放送普及の指針(ガイドライン)を作成した時に、案文ではニュースやスポーツ中継の生放送番組や音楽番組などがガイドラインの対象外になっていた。これでは、いつまで経っても生放送などに字幕が付かないことになることを指摘したので、「当面現在の技術では不可能な」という意味で「現在のところの」という注釈が入ったのだ。
http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h16hakusho/zenbun/html/zuhyo/fig01_01_74.html
当時は不可能を思われていたニュースやスポーツ中継も今では字幕放送が行われている。技術的には字幕制作自体が不可能な番組は少なくなりつつある。逆に、デジタル化で出来なかったことが出来るようになる。要約や簡易な言葉の字幕とか文字の大きさや字体の違う字幕とか選択できるようになるはずだ。生放送は字幕が遅れて表示されるが映像の遅延を書ければ字幕の校正の時間も確保できて見やすくなる。字幕だけではなく、背景音を小さくして言葉を聞きやすくすることもできる(ミュート機能)。

もう一つの懸念は、有識者や放送事業者だけで研究会を作ろうとしていることだ。前回の次世代字幕放送研究会も当事者団体は一回だけ会合に呼ばれて意見を述べるだけだった。その時は、技術的な課題が中心だからという理由だったが、当事者が会合に参加することで知識が得られ、そのことが新しい知見やニーズを生み出すことになる。実際に、その時に紹介した高齢者がテレビ放送を視聴する場合の困難さに関する調査結果が報告書に採用された。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2002/pdf/020424_2_1.pdf
http://www.soumu.go.jp/s-news/2002/020424_2.html
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/jisedai/020110_1.html

障害者基本法を持ち出すまでもなく、国が障害者施策を形成する時には障害者当事者を参画させなければならない。

ラビット 記