難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

手話ニュースの理解 要約筆記の通訳行為

2007年03月19日 19時29分53秒 | 要約筆記事業
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手話ニュースは、手話でニュースが報道されるところに意味がある。
ろう者の言語、母語である手話で概念が伝えられる。ろう者は聞こえる人が音声で聞くのと同じように「聞く」のだ。
ニュース原稿は記者が取材したことを伝えるために日本語で書いてある。その日本語の原稿を読んだろう者のキャスターは放送局、この場合はNHKだが、の報道のスタンスを踏まえて、そのニュースの意味、報道価値が何なのかを判断して、手話で伝えている。ディレクターやデスク、他のキャスターと協議しているかもしれないが、どういう言葉で(手話表現)するかは、最終的にキャスターに委ねられている。

要約筆記者は、音声や手話のように「聞く」ことができるように、話し言葉を理解しやすい文章にしている。
相手に理解できる文章にして伝えるためには、いったん要約筆記者が理解しなければならない。その理解を元に、相手にすぐに理解できる文章を書けるかどうかは、要約筆記者の言語体験、言語能力によるところが大きい。手話ニュースの原稿の内容を伝えられるかは手話ニュースキャスターの日本語能力、手話言語の力に負うところに大きいのと同じだ。

話し手の言葉をすぐに読み手に負担のない文字で伝えることを要約筆記者の通訳行為と言っているのは、相手に伝えるために話し言葉をそのまま文字化しないという意味だ。

ラビット 記



日本語の「読みづらい」理由 要約筆記の文字について

2007年03月19日 07時36分15秒 | 要約筆記事業
070315_2055~001.jpg話し言葉をそのまま文字にすることが読むことは、聞くよりも負担(ストレス)になるということは日常的に感じている。話を聞くとそのオンが頭の中を駆け巡るが、文字を読むとそうはならない。
「日曜の表参道に桜がもう咲いていたよ」と聞くと「ニチヨウノオモテサンドウニサクラガモウサイテイタヨ」というオンが頭の中に残り、
「何で日曜に表参道にいたの?」、「えっ、もう桜が咲いているの?」、「表参道って、あのシャネルの旗艦店があるところね」とか頭の中で色々考える。
しかし、文字で読む場合はそうはいかない。文字を目で追って、その漢字と仮名を読み分け、その意味を考えるからだ。
サクラが櫻と書いてあったら、その文字を知らない人はそこで思考が停まるだろう。
その他にも、話し言葉の冗長性が文字になると、あれこれ言っているだけで話していること(意味)は一つしかなく、字数が多いだけかえって分からないということもあげられるだろう。

「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ、講談社学術文庫P96-97)には、日本語のヨコ組みが読みづらい理由として、二つ指摘している。
「文字を見るということをと言語として読むということをいっしょくたにして、見えたから読めたのだときめてしまっている」
「その文字の中に単語を区別し、その単語の意味を読み取りながら、単語の平面的なつながりの背後にある立体的な書き手の思想をつかむと言う、精神的な作業をすすめなければならない」

要約筆記のことを述べている訳ではないが、確かに聞くよりは読むことがストレスになるという理由にもなっていると思う。

ラビット 記

写真はNHK手話ニュース、ろう者は文字を読むより手話で「聞く」のがストレスがない。