CS障害者放送統一機構は、能登沖地震における聴覚障害者へのテレビ放送の対応に付いて、昨日総務大臣に以下のような要望書を提出した。
同様の文書を内閣府、厚生労働省にも提出している。
ラビット 記
写真は、3/25の24時のFNNの生放送のニュース
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2007年3月28日
総務大臣 菅 義偉 様
特定非営利活動法人
CS障害者放送統一機構
理事長 高田英一
災害時の字幕放送、手話放送に関する緊急の申し入れについて
日頃は私たち特定非営利活動法人CS障害者放送統一機構に関わり、格段のご配慮を賜り厚くお礼を申し上げます。
さて、この3月25日、石川県能登半島で大地震が発生し、NHK総合テレビでは地震発生直後から通常の番組を取りやめ、緊急の地震ニュース番組を放送しました。しかし、字幕放送と手話放送は行われず、全国の聴覚障害者はそれらの災害情報から疎外されました。
正午になって、定時のNHKニュース番組が始まり、ここからようやく字幕(クローズドキャプション)が付与されました。これはあらかじめ定時のニュース用に準備されていた字幕付与体制を活用したものと思われます。
お昼のニュースの後につづき、地震情報番組が放送されましたが、ここにも字幕放送はありませんでした。
被災地の聴覚障害者団体である社会福祉法人石川県聴覚障害者協会は、当日午後、緊急にNHK金沢放送局をはじめ、石川テレビ、テレビ金沢、北陸放送などの民放各局に対し、聴覚障害者の災害情報保障のために、地震関連番組にただちに字幕を付与するように緊急の申し入れを行いましたが、各放送局からは「すぐに字幕を付与することは困難だ」との回答でした。これでは、これからもローカル放送局が発信する余震情報や避難生活、災害救助復興に関わる地域のきめ細やかな情報が、聴覚障害者には届かないことになります。
この状況は、国連においては、障害者に対する情報保障の権利を明記した「障害者権利条約」が採択された今日においても、10年以上前の阪神淡路大震災時の聴覚障害者に対する情報疎外の状況と、何ら変わるところではありません。
他方、特定非営利活動法人CS障害者放送統一機構の「目で聴くテレビ」は、緊急にスタッフを招集し、地震発生から約1時間後ではありますが、午前10時42分から午後0時35分までの間、NHK総合テレビの地震ニュース番組に対応する独自のリアルタイム字幕と手話通訳を、CS通信で被災地を含む全国の受信者約9000世帯に緊急配信しました。
これによって専用受信機「アイ・ドラゴンⅡ」をもった聴覚障害者は、受信機の「ピクチャー・イン・ピクチャー」機能を活用し、NHKの地震ニュース番組にリアルタイムで「字幕と手話通訳」を付加して、地震情報を一般視聴者と等しく得ることができたと思われます。
今回の地震放送を通じて、NHK及び民放各局は、現状では、あらかじめ字幕付与を準備している定時ニュースの時間帯以外では、突発的に発生する災害に対応したリアルタイム字幕は付与できない事実が改めて浮き彫りになりました。
それができない事情は各局まちまちだと思われますが、いずれにしても災害は待ってくれず、私たち聴覚障害者は今も生命と安全を脅かされています。
一刻を争う聴覚障害者の緊急災害情報保障のために、私たちは次のことを早急に実現していただくよう、強く求めるものです。
よろしくお取りはからい頂きますよう、お願い申し上げます。
記
1.総務省は、緊急災害時における聴覚障害者の情報保障のために、字幕付与の補完的機能を果たしている特定非営利活動法人CS障害者放送統一機構「目で聴くテレビ」に対し、通信衛星回線確保費用などを負担していただくこと。この回線確保には、緊急時に備えて日常的に番組配信をおこなうために必要な時間を含むものとすること。
2.総務省は、NHK及び民放各局が、緊急災害時に特定非営利活動法人CS障害者放送統一機構「目で聴くテレビ」が独自に行う手話と字幕による聴覚障害者向け番組配信に対して、各放送局が有する災害に関する情報を必要に応じて提供するよう指導、助言すること。
3.総務省は、NHK及び民放各局が、特定非営利活動法人CS障害者放送統一機構や聴覚障害者情報提供施設などの聴覚障害当事者の自助組織、関係組織の協力も得て、緊急災害時においてローカル番組を含むテレビ番組に「字幕と手話通訳」の付与を実施するよう指導、助言すること。
以上