彦根の歴史ブログ(『どんつき瓦版』記者ブログ)

2007年彦根城は築城400年祭を開催し無事に終了しました。
これを機に滋賀県や彦根市周辺を再発見します。

映画『一命』

2011年09月07日 | イベント
10月15日に公開される市川海老蔵さん主演の映画『一命』を公開一カ月前にして観てきました。
この映画の紹介でよく言われるのが「『切腹』のリメイク」という話です。しかし、原作を滝口康彦さんの『異聞浪人記』にしたということが共通する別の映画になるそうです。


かんたんなあらすじを書きますと。

彦根藩主が井伊直孝だった頃。
彦根藩江戸上屋敷に、元福島正則家臣・津雲半四郎(市川海老蔵さん)と名乗る浪人が現れて、「玄関先で切腹させて欲しい」と申し出たのです。彦根藩家老・斎藤勘解由(役所広司さん)は、2ヶ月前にも同じく元福島家家臣と称する千々岩求女(瑛太さん)という浪人が現れて、切腹した顛末を話しました。
この頃江戸では、大名屋敷に切腹したいと申し出て仕官や金品を受ける浪人が流行し“狂言切腹”と言われていました。彦根藩では狂言切腹が来た時には本当に腹を斬らせることにしていて、求女は丁重にもてなされたあとで、自身が持っていた竹光で無残な切腹を遂げたのです。

この話を聞いても半四郎の考えは変わらず、勘解由は庭先に切腹場を設けて半四郎はその場に就きました。ここで半四郎は最後の願いとして「介錯人を沢潟彦九郎、松崎隼人正、川辺右馬助にして欲しい」と言います。
勘解由がこの三人を呼ばせに行くと、三人とも前夜から行方知れずとなっていたのです。そしてこの三人は求女の切腹に深く関わった彦根藩士でした。
この事に気が付いた勘解由が、藩士たちに半四郎を囲ませた時、半四郎は自らがこの場にやって来た理由を話し始めるのです…



昔は『切腹』という映画が作られ、今回は『一命』と題されたように、武士の命に関わる物語です。その生き様が武士の守る誇りとは何なのか? お家とは? 家族とは? 義・情・そして名誉。
日本人が武士という生き物から引き継いだ武士道という物から、現代人が抱える問題すらも浮き彫りにしたような作品でした。

また、『切腹』・『一命』の対比のように、この作品には対比する何かが多く登場します。
・江戸時代最大のエリートともいえる彦根藩の家老と一介の浪人
・斎藤勘解由が飼っている白猫(ひこにゃんの絡みかな?)と千々岩求女の白猫
・刀を手放した夫と刀を持ち続けた父
・取り潰された福島家と譜代大名筆頭井伊家
などなど…
役所広司さんと市川海老蔵さんすらも対比の構図でした。

現代的な解釈をするなら、エリートコースを進んだ一流企業の社員や政治家が、就職難の時代に働いていた会社が倒産して職を失った人や就職すら見込めない若者に対して見せる視線を沢潟、松崎、川辺らは顕著に著しています(似たようなことが原作本のあとがきにも書いていたような気もします…)

日本人が、日本人たる由縁とも言える武士道。
国民総武士化された現代において、武士の生き方って何? を強く問いかけています。
この作品には、本当の悪人も本当の善人も登場しません。自分の役割を自分の信念で生きて死んだ、そんな男たちの物語でした。


映画で使われた井伊直孝の甲冑は、彦根各地で随時展示されています。
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